諸外国に比べ、日本のカード決済手数料は高いとされる。一例としてリクルートの「Airペイ」を挙げるが、American Express、Mastercard、Visaで3.24%、JCBやその他で3.74%となっている。これを例えば米国のSquare(Block)の事例でいえば、1トランザクションあたり10セントのミニマムチャージはあるものの、手数料は2.6%となっており、日本と比較して2割ほど安い。
欧州ではクレジットカードとデビットカードともに手数料(Interchange Fee)の上限が規定されており、全体に米国などと比較しても低めの水準に抑えられている。中国でも欧州と同等程度の手数料が設定されており、やはり低く抑えられているようだ。
手数料の設定は業態や取引量によって変化するほか、アクワイアラが戦略的に加盟店向けの手数料を引き下げることもあり一様ではないため、一律での比較は難しいが、世界的な平均と比べれば日本の手数料は1%程度高いというのは事実のようだ。
「カード会社がぼろ儲けしている」と説明できれば簡単だが、そう単純な話でもないのがこの問題の難しいところだ。理由としては2つあり、「日本のカード決済のビジネス構造」「そもそもシステム利用料が高い」といった課題がある。
後者については、全銀システムにおける送金手数料や、NTTデータの「CAFIS」といったシステム利用料の高さがよくやり玉に挙がっている。リアルタイム性や安全度などが評価されているが、1トランザクションあたりの利用料が高く、最近のキャッシュレスの潮流である小額決済の利用において重石になりやすい。
近年はその問題も是正されつつあるものの、まだまだ高コストという声はよく聞く。「マルチアクワイアリング」と呼ばれる相乗り構造により、システム周りが複雑になっているという問題もある。全体に日本での高コスト体質がシステム由来にあるというのは筆者も同意するところで、今後改善すべき点なのは確かだ。
一方で難しいのが前者のビジネス構造に由来する部分で、高い手数料にもかかわらず、カード会社の収入がそれほど大きくない点だ。例えば、経済産業省が手数料に関する調査報告を出しているが、カードを発行する「イシュア」の利益は全体の8.5%でしかなく、コストの4割をポイント還元を含む販促費などに圧迫されている状態だ。
売上構造としても、半分近くを占めていた手数料収入は減少傾向にあり、最近ではリボを含む手数料収入やカード年会費などの収入でようやく利益を出せるという水準だ。日本ではクレジットカードのリボ払い利用が諸外国よりも少なく、採れる戦略が限られているというのが現状となる。しかもポイント還元の存在がごく当たり前という商習慣のなか、コスト負担から利益は低くならざるを得ない。「ポイント原資負担」「金利手数料の少なさ」という日本のクレジットカード事情に由来する側面が大きく、その構造を簡単に変えられない点が課題となる。
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