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コロナ禍で苦境に立たされる国際物流 AI導入で改善を狙う各国の動きウィズコロナ時代のテクノロジー(2/3 ページ)

» 2022年03月07日 08時00分 公開
[小林啓倫ITmedia]

デジタル化による物流改善の取り組み

 こうした事態に対して、デジタル化でその苦境を乗り越えようという動きが生まれている。もちろんデジタル技術があらゆる問題を解決してくれるわけではないが、物流の在り方を見直すきっかけとなるだろう。

 2021年6月に閣議決定した「総合物流施策大綱(2021年度〜2025年度)」では、今回のパンデミックについて、大きな混乱を招いているものの「これまで進捗しなかった物流のデジタル化や、物流業界における構造改革を加速度的に促進させる誘因となる可能性があり、これらを一気呵成に進めるまたとない好機」でもあると表現し、新技術の積極的な導入を促している。

 そうした新しい物流を支えるものとして注目されているのが、おなじみAI(人工知能)技術の活用だ。パンデミックによる混乱を管理し、今後を見通して先手を打つための手段として、AIによるロジスティクス支援が注目されている。

 例えば2016年に設立したスタートアップ企業である英7bridgesは、サプライチェーン管理の自動化をAIで支援するプラットフォームを提供している。同社が目指しているのは、デジタル化した物流関連のデータを統合し、最適な物流計画を自動で生成することだ。

英7bridgeの公式Webサイト

 物流には無数のサードパーティーが関係し、ある物品が目的地に到達するまでに多種多様なチェックポイントが発生する。仮にそれら全てをデジタル化していたとしても、それを人間が目でチェックして、最適解を導き出すことは容易ではない。そこでAIにそれを手助けしてもらおうというわけだ。

 AIによる管理は、今回のパンデミックのように特殊な状況にも対応可能だとしている。同社は「LEO」(最適化のための物流エンジン:Logistics Engine for Optimization)

という独自のAIを開発しており、これが常に物流関連データを取り込み、自動で学習を重ねる。

 それにより、リアルタイムで変化する状況に柔軟に対応し、問題を検知した場合にはシミュレーションと予測を通じて、代替案を提示することが可能となっている。

 7bridgesの製品は、医療関係の施設にも導入されており、Wired誌の報道によれば、英国でのワクチン普及に関するシミュレーションも提供しているそうだ。もちろん通常の物流も世界の経済を支える重要な要素だが、医薬品が計画通りに目的地に届くかどうかは人の生死に直接的に影響する。そうした現場で同社の製品を活用していることは、デジタル技術による物流支援に対する信頼が生まれていることを示すものといえるだろう。

 こちらも2017年に設立されたばかりのスタートアップ企業である、米LeafLogisticsが提供しているのは、運送業者向けの関連製品だ。彼らのアプリケーションでは、ロジスティクス業界に関係するデータを幅広く取り込み、今後の需要と供給に関するシミュレーションを実施。

 その上で、運送事業者が顧客に対して提示する計画や条件を、自動で生成できるとしている。これは事業者にとっての効率化を意味するが、顧客である一般の企業にとっても、物流に関する不確実性やコストを削減するものとなるわけだ。

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