コンパクトな財布を設計しようと考える場合、その選択肢は意外に狭い。
まず、薄くするのか、小さくするのかを選択する必要がある。それに付随して、長財布、2つ折り、3つ折り、それ以外といった、形状の決定がある。コイン、紙幣、カードの全てを収納するのか、何かを省くのかも重要な選択肢だ。そして、それらをどのように構成するかで、財布自体の構造は大体決まる。
いつの間にか財布の中心ジャンルになったのではないかと思えるほど増えた「コンパクトな財布」はどれも、このような選択の中で生まれている。コンパクトにするという命題を実現するには、なるべくシンプルな構造にする必要があるし、使い勝手を考えれば従来の財布からそれほど逸脱できないため、そうそう新しいアイデアが出てこないのが、このカテゴリーである。
どのスタイルを取るにせよ、最も大きな課題として財布作りに立ちふさがるのが、「どのようにして財布を閉じるか」ということだったりする。
ファスナー、スナップボタン、擬宝珠、ベルト、ベルクロ(面ファスナー)、ただ折り曲げるなど、いくつかの方法はあるが、どれも「小型化」の邪魔になるのだ。ベルクロは、その中ではスペースを取らない自由度の高い留め方だが、開閉時の音が大きい、革財布などの大人の持ち物にはあまり馴染まないといった問題があるし、ファスナーはしっかりと閉じられるが、一定のスペースをどうしても必要として開閉に結構手間がかかる。スナップボタンはその構造上、どうしてもある程度の厚みを取る。かといって、ただ折り曲げるだけだと、構造がシンプルにするほど、中身がもれ落ちやすくなる。
つまり、閉じた状態を維持しつつ開閉を簡単にする問題と、小型化・薄型化は、そう簡単には両立しないのだ。ある程度厚みのある「小さな財布」の方が、薄さを追求した財布よりも高い完成度を要求するのはそこが理由だったりもする。
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