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「Web2.0」って何だったの? 「Web3」との違いは? ネットに詳しいけんすう氏に聞いてみた(1/4 ページ)

» 2022年03月24日 12時00分 公開
[岡田有花ITmedia]

 「Web3」(Web3.0)という言葉をよく目にするようになりました。Web3は、Web2.0の“次”という意味で名付けられた、インターネットの新しい概念とされています。

 そもそも、Web2.0とは何だったのでしょうか。15年ほど前に提唱され、当時は大きな話題を集めましたが、若いネットユーザーにはなじみがない人も多いかもしれません。

 そこで、Web2.0ブームのころからネットの最前線にいた起業家の「けんすう」こと古川健介さんと、当時からネットの現場を取材していた私、岡田有花(通称:ゆかたん)が、Web2.0を振り返りながら、Web3への展望について語り合いました。

プロフィール:

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けんすう(古川健介)

1981年生まれ。2000年に学生掲示板「ミルクカフェ」を立ち上げて以来、ネットコミュニティ運営に携わる。05年、掲示板「したらばJBBS」をライブドア(当時)に事業譲渡。06年リクルートに入社し新規事業開発を担当。09年、ロケットスタート(後のnanapi)を創業。14年にKDDIに買収される。Supership取締役を経て、18年にアルを創業し、代表(現職)に就任。ネット黎明期から、Webやコンテンツに関する情報発信を続けている。

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ゆかたん(岡田有花)

1978年生まれ。高校生からインターネットを始め、大学生の頃はパソコン室に入り浸りクラス掲示板を運営していた。03年、新卒で現在のITmedia NEWSに配属(当時はZDNet)。「IT戦士」と名乗ってWeb2.0企業などを取材。10年、けんすうが代表を務めるnanapiに転籍。11年からフリーライター。インターネットのダイナミズムが生み出すつながりやコンテンツが好き。

ゆかたん 「Web2.0」……なんか流行ったよね、15年ぐらい前に。どんなんでしたっけ。

けんすう Web2.0は、IT系出版社を経営していたティム・オライリー(Tim O'reilly)さんなどが提唱したワードですね。

 2005年にオライリーさんが公開した論文「What Is Web 2.0」(参考リンク)で使われたのが最初といわれています。

 論文の中では

(1)ユーザーの手による情報の自由な整理

(2)リッチなユーザー体験

(3)貢献者としてのユーザー

(4)ロングテール

(5)ユーザー参加

(6)根本的な信頼

(7)分散性

 などを、Web2.0の特徴として挙げていました(参考リンク

 でも、今から振り返るとこれは、「なんか当時来ていたモダンなWebサービスを総称して、それを整理した」という印象があります。

画像 「What Is Web 2.0」より

 そして、当時から15年以上経った今、Web2.0とは何だったのかを考えてみると、シンプルに「ユーザーの参加率の劇的な向上」なのではないかと私は思っています。

Web2.0=発信者の激増

けんすう Web1.0の時代……。1990年代のインターネット黎明期から、個人がホームページ(Webサイト)を開設したり、コメントを投稿をしたり、レビューをしたりというのは、できていたんです。

 例えば、2000年代前半の掲示板サイトでは「見ている人が95%、書いている人は5%」ぐらいだと言われていました。私も2000年代はじめに掲示板(「ミルクカフェ」「したらばJBBS」)を運営していましたが、見るだけの人がほとんどで、書き込む人は1%に満たなかったような感覚があります。

 つまり、2000年代初頭あたりまでのWebサービスは、基本的に「メディアだったら見るだけ」「ECだったら買うだけ」という形がメインだったとも言えます。「紙に印刷されてた新聞が、インターネットでも読めるようになった」みたいなものの延長ともいえるかなと。

 Web2.0で大きかったのは「発信者側の人が非常に増えた」という点です。これが「Web2.0の本質はユーザー参加率の劇的な向上だ」と私が考える理由です。

画像 画像提供=けんすう

 例えば、2007年当時のmixiでは、ユーザーの70%以上の人が日記を書いていたといわれています(参考リンク)。掲示板では5%も書いていなかったのに、SNSでは70%が書いたというのが革命的だったわけです。

ゆかたん なるほど。私のイメージでは「Web2.0=SNS」だったんですよね。SNSは、02年に米国でFriendsterがオープンして、03年にMySpace、04年にOrkut(オーカット)が始まった。日本ではGREEが03年、mixiが04年。Web2.0の提唱は、SNSが流行りだした後だから、後付け感がすごいですね。

けんすう そうなんです。Web2.0の提唱よりも、サービスが流行るのが先だった。だから「なんか当時来ていた、モダンなWebサービスを総称して、それを整理したのがWeb2.0」だと言えるわけですよね。

ロングテールって何だっけ?

ゆかたん Web2.0の定義に含まれる「ロングテール」もなつかしい言葉ですね。ロングテールは「リアル店舗ではマイナーで扱われないような商品も、適切な売り手と消費者の参加によって売れるようになる」というイメージだった気がします。

けんすう そうですね。ロングテールとはECサイトの売れ方の話で、2割の売れ筋商品の売上げを、8割のニッチ商品の売上げが上回るという現象です。米Wired誌の当時の編集長、クリス・アンダーソン氏が提唱しました。

画像 クリス・アンダーソン氏の著書「ロングテール」日本語版(2006年刊行、画像はAmazon.co.jpより)

 Web2.0とロングテールの前提には、コンテンツ量が爆発的に増えたことがあります。

 つまり「ユーザーが拡大したことによりユーザー投稿が増え、ニッチな情報もネット上にアップされるようになった」ということですね。

 また、ECサービスは実店舗より商品を保管するスペースのコストが低いので、多くの商品をラインアップできるという点で、もともとロングテール化の兆しはありました。

 その上で、Web2.0時代には「 ユーザー行動により、ニッチな商品をリコメンドできるようになった」というのも大きいでしょう。参加ユーザーの劇的な増加によって、ニッチな情報や商品が増えた使えるようになったということです。

ゆかたん むしろネットでも、売れ筋に集中する現象が目立ったように思います。売れ筋がより売れて、マイナーは埋もれてしまう状況が指摘されましたよね。

けんすう 確かに、ドワンゴ創業者の川上量生さんもかつておっしゃっていたように、「インターネットによってコンテンツの実質的な多様性が減る」という面もあったと思います(参考リンク)。投稿が増えると、人気があるもの(ランキング上位)にユーザーが集中し、人気コンテンツはより人気が高まります。制作者も、人気が出そうなコンテンツを投稿しようと考える。そうすると、同じようなコンテンツが増えていくという現象です。小説投稿サイトで、ありとあらゆる種類の小説が投稿されるのではなく、一部のジャンルに偏るなどは、こういう現象かもしれません。

ゆかたん そうですよね。ECに関して言えば、20年代に入って、AIによるリコメンドがより精緻になり、かつ、コロナ禍で実店舗が開いていない……という状況を経てようやく、マイナー商品もネットの市場に出回って、ニッチなニーズとニッチな商品がマッチングできるようになってきた気がしますね。

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