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「Web2.0」って何だったの? 「Web3」との違いは? ネットに詳しいけんすう氏に聞いてみた(3/4 ページ)

» 2022年03月24日 12時00分 公開
[岡田有花ITmedia]

スマホの普及でWeb2.0が加速した

ゆかたん スマートフォンの普及も、Webの世界を変えましたよね。

けんすう スマホはすごい。べんり。

ゆかたん すごい! べんりだね……。

けんすう なんでもできちゃう……。すごい……。

ゆかたん 急に5歳児ぐらいの会話になったね……。

けんすう スマホはやっぱり、使いやすい、シンプル、っていうのは大きくて。PCのキーボード操作の習得は小学生にも難しいけど、スマホだとできる。それによって ユーザーの参加率が一気に向上しましたね。

 さらに、カメラやマイクがついていて、テキスト入力以外で表現できる。文章に自信がない人たちも、動画や音声で豊かな表現ができる。それがユーザーのネット参加率の向上につながったんですよね。

 例えば、価格コムのレビューは、文章を書くのに抵抗ない人達じゃないと投稿できない。小学校2年生が価格コムのレビューで「小生、カメラは今年7台購入しているが、撮れる画像はこの機種が一番だと考える。しかしバッテリーの持ちには不満が残る」とかは書けないですよね。

 でも、TikTokに動画を投稿したりはできる。小学校低学年でもTikTok流行ってるって言いますし。ブログで長文は書けなくても、Instagramで好きなファッション小物の写真をアップするだけなら、多くの人ができますよね。

ゆかたん スマホは今や赤ちゃんでも見るし、操作もすぐ覚えますしね。スマホが、Webの閲覧数もいいね数も投稿者数も、劇的に向上させた。スマホはWeb2.0をぐっと進めたんですね。

 こどもの参加率でいえばスマートスピーカーもすごいですよね。うちの息子は2歳からスマートスピーカーと会話していて。スマートスピーカーから「投稿」することはないですが。

けんすう スピーカーに話しかけることによって、検索内容などのデータがサーバに蓄積していくから、データを送っているという点では投稿に近いかもしれません。データが取れれば、データに基づいてよりUI、UXが改善され、さらに投稿も増えていきますよね。

Googleアナリティクスが変えた世界

ゆかたん そういえばWeb2.0のころには、「Ajax」(エイジャックス/Asynchronous JavaScript + XML)が盛んに言われていました。ユーザーの操作に従ってWebブラウザ上の画面が動く、例えばGoogleマップみたいなサービスの裏側で使われているもの。今で言うと、Webアプリという言葉が近いのかもしれないけど。

けんすう Ajaxもアプリも全部、いかにユーザーに滞在してもらったり、行動してもらったりするのか、試行錯誤した結果です。そして、このUX・UIの改善もデータ取得して、改善するという仕組みがあってからこそですね。UXは「ユーザーの行動を促す形」に進化していっているんですよね。

 また、2005年に「Googleアナリティクス」が公開されたことを皮切りに、どのユーザーがどう行動して、どうやったか……みたいなのも、サービス提供側が逐一追えるようになりました。それまでは高価なツールを使うか、チープなアクセス解析しかなかったのが、Googleが一気にシェアを取り、それによりアクセス解析の上手な生かし方みたいな知見が広がった記憶があります。

ゆかたん そうですね。今はユーザーの閲覧データを基に、サービス提供者がどんどんサイトを改善しているものね。サイト改善のためのデータをユーザーが(無意識に)送ってあげすぎている気がしてきました。これもWeb2.0の課題ですね。

"ユーザーがデータに価値を与えた"ことのひずみ

けんすう ティム・オライリーさんは「Web2.0はPeoplewareだ。Web2.0企業のサービスは、ユーザーがデータに価値を与えて、より良いものにしてくれる」と言っていたんです(参考リンク)。

ゆかたん Web2.0企業は、ユーザーにデータをもらう企業ってことですか?

けんすう ユーザー投稿でレビューを集めてデータベースの情報量を増やすといったのもそうだし、Googleみたいに、Chromeのユーザーデータを使って検索エンジンの精度をあげるとかもそれに当てはまりますよね。

 より良いとは、「データベースの量と質をより良くする」ということですね。データベースの量と質が高い → ネットワーク外部性が高まる →みんなそこにくる→またデータの量と質が高まると。

ゆかたん なるほどそうですね。ネットワーク外部性は、Web2.0の議論の中でもよく出てきていました。ネットワークを内在したサービス(SNSなど)は、サービスの利用者が増えるほどサービスの価値が上がるという現象。強いサービスはより強くなっていく。

 そして今は、強いサービスにユーザーデータが集まりすぎて、ユーザーのプライバシーの問題がかなりクローズアップされてきましたね。Web2.0のひずみというか企業側の傲慢といったものも見えている。

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