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卓球の正しいスイングを教えてくれるロボットアーム VR環境下でマンツーマン指導Innovative Tech

» 2022年04月22日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 早稲田大学中島研究室とQatar Universityの研究チームが開発した「T2Snaker: a Robotic Coach for Table Tennis」は、VRシステムとロボットアームを連動させた卓球トレーニングシステムだ。VR環境下でユーザーの手の動きを誘導することで、卓球の打ち方の練習を効率的に行い、スキルアップをサポートする。

提案するロボットアームを用い、VR上で卓球の練習をしている様子

 提案システムは、VR環境とロボットアームで構成する。ロボットアームは9個のサーボモータを直列に接続したもの(9自由度)で構成される。全長990mm、重量2.25kg。蛇ロボットから着想を得たという。

 ロボットアーム先端には卓球ラケットとVRコントローラーが取り付けられ、 VR内のラケットの動きとロボットアーム の動きを同期している。使いやすさを考慮し、ロボットアームはアルミ製の台座に固定しているが、ウェアラブルとして身体への装着も可能だ。

9自由度で動作するロボットアーム

 システムは、VR環境をもとに正しいスイングを行うためのロボットアームの姿勢を計算する。計算されたロボットアームの角度は、システムからロボット制御システムに送られる。

 ユーザーはVR HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を装着し、ロボットアーム先端に取り付けられたラケットを握ってVR卓球ゲームを体験することで、正しいスイングが力覚フィードバックによって体感できる。

 評価実験ではVR経験がある参加者10人を対象に行われた。ロボットアームを使用し練習するグループと、VRだけで練習するグループに分かれてテストした。実験の結果、ロボットアームを使用したグループの方がスキルレベルがより向上した。

 参加者からは、「ロボットアームによって、スイングの感覚がよりダイレクトに伝わるのが良いと思う」や「実戦でコーチがサポートしてくれているような感じがする」など、物理的な卓球指導を高く評価する声が聞かれた。

Source and Image Credits: Kodai Fuchino, Mohammed Al-Sada, Tamon Miyake, and Tatsuo Nakajima. 2022. T2Snaker: a Robotic Coach for Table Tennis. In Augmented Humans 2022 (AHs 2022). Association for Computing Machinery, New York, NY, USA, 305-308. DOI:https://doi.org/10.1145/3519391.3524029



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