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家庭用プリンタの世界がなかなかの荒れ具合な件(2/2 ページ)

» 2022年04月29日 16時18分 公開
[小寺信良ITmedia]
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徹底したコスト削減

 「EP-714A」は最大がA4なので、サイズ的には以前の「EP-976A3」より一回り小さく、軽い。10年ぶりの新プリンタなのですっかり浦島太郎状態なのだが、セットアップはPCに接続することなく、ディスプレイ部に表示されるQRコードを読み取って、スマホを使ってオンラインで可能である。

photo 電源を入れただけですぐセットアップ開始

 よって電源コードは付いてくるが、USBケーブルは付属しない。スマホでセットアップできない、要するにネットがない環境の人向けに、ドライバやソフトウェア等が入ったCD-ROMは付属するが、今どきTypeBのでっかい端子のケーブルなんてなかなか持ってないのではないだろうか。

 流れとしてはデジタルカメラの画像転送と近く、まず専用アプリをダウンロードして、Bluetoothで接続したのちWi-Fi情報を転送、という流れだ。本体ディスプレイはものすごく小さくなり、情報は一度に1つしか表示できない。よってステータスを一覧で確認するには、スマートフォンのアプリで見た方が早い。

 以前Epsonのプリンタは、Epson Printというアプリからスマホ印刷に対応した。だが本機はEpson Printは使えず、LINEの特定のアカウントに対してファイルを送るとそれが印刷されるようになっている。メール添付でも同様だ。コンビニ向けのネットワークプリントサービスを利用した方はご存じかもしれないが、やってることはそれと同じである。

 印刷するのに専用アプリを使わないので、スマホのバリエーションやOSのバージョンに逐一対応する必要もない。プリンタ全盛の頃は開発もメンテナンスコストもかける意味があったのだろうが、今となってはすべてクラウドにまとめられた。

 利用のハードルはそれほど高くないが、ディスプレイに情報が表示しきれないため、こうした設定に関する情報はすべてプリントアウトされて出てくるのが面白い。

 なおコストダウンのためか、印刷された紙を受け止めるトレイは手動で引き出さなければならない。毎回プリンタコマンドを投げて、動かないなと見てみると「トレイを引き出してください」というメッセージで止まっている。以前のプリンタは自動でトレイが出てきたし、電源OFFで自動で引っ込んだので手間いらずだった。まあモーターを1つでも2つでも、節約したいところなのだろう。

 コロナ直前まで、家にPCがない、あっても古いという家庭が増えて、PTAや子供会などの活動に支障が出るようになった時期があった。なぜ支障が出るかというと、紙の書類の更新や手直しができないからである。

 だがコロナ禍でテレワークが主流になると、そこそこ新しいPCが家にあるという状況が戻ってきた。ところがプリンタの立ち位置は、前と同じポジションではいられなくなった。今どき紙の書類を保護者に配付する方法がなく、PDFを作ってLINEで流して終わりになったからだ。

 今回のプリンタは、名刺を印刷するために買ったようなものだが、その習慣もいつまで残るだろうか。このプリンタもあと10年使うと考えたら、もはや人生最後のプリンタがこれ、なのかもしれない。

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