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30m以上ジャンプする小型ロボット Disney含む米国チームが開発Innovative Tech

» 2022年05月02日 07時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 米University of California, Santa Barbara、米Disney Research、米California Institute of Technologyの研究チームが開発した「Engineered jumpers overcome biological limits via work multiplication」は、素材を曲げて蓄積した力を解放するシンプルな構造で、ロケットのように上方向へ30m以上ジャンプする小型ロボットだ。この高さは現在の世界記録の3倍だという。

30m以上ジャンプした最新バージョンのロボット

 研究チームは2017年、このプロジェクトを始めた当初、カーボンファイバーの棒とワッシャー、ダクトテープ、比エネルギーが高い輪ゴムなどを使い試作品を制作した。飛ばした結果、高さ8〜10メートルほどジャンプし、可能性を感じたという。

 研究チームはさらに高くジャンプできないかと模索し、輪ゴムの支持構造を軽くすること、輪ゴムを伸ばすためのモーターとギアの設計、エネルギーを素早く放出する機構などに注力した。

 その中で、輪ゴムの代わりにカーボンファイバー製の弓形バネを4本使用し、さらに弓形バネに高比エネルギーゴムを複数追加して全体の比エネルギーを高めるという新しいコンセプトを提案する。

 このコンセプトでロボットを試作した。最終バージョンの大きさは約27cm、重さは約28g。飛ばす際は、小さなモーターを使用しポリエチレンラインを巻き取りスプリングを圧縮する。本体はカボチャのような形になり力が蓄積され、ラッチを解放し発車すると、ロケットのような棒状に収縮し空気抵抗を抑えて空高く飛ぶ。シンプルだが、試行錯誤の上に何度も調整された作りだ。

 結果、高さ32.9mまで飛ばすことに成功した。

打ち上げシーンの画像

 研究チームは提案するジャンプロボットが宇宙探査で使えるのではないかと考えている。表面重力の弱い月にある場合、約125mの高さまでジャンプし、1ステップで一方向に約0.5km移動すると予測している。

Source and Image Credits: Hawkes, E.W., Xiao, C., Peloquin, RA. et al. Engineered jumpers overcome biological limits via work multiplication. Nature 604, 657-661 (2022). https://doi.org/10.1038/s41586-022-04606-3



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