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いまだに新車でボディーコーティングしてるの!? 現場のプロに聞くペイントプロテクションフィルム最新動向西川善司の「日産GT-Rとのシン・生活」(3/7 ページ)

» 2022年05月18日 10時25分 公開
[西川善司ITmedia]

光沢感はボディーカラーと比較してどうか?

 ボディーカラーの光沢感はどうなのだろうか。ボディーコーティングが放つ光沢感に対しPPFはどの程度迫れるのだろうか。

 「XPELのULTIMATE PLUSだと、厚みにして約12μmのクリア層が塗布されているので、この部分が事実上、ボディーコーティングの光沢感と同じ効果をもたらします。施工後はパッと見でボディーコーティングなのかPPFなのかは区別はしづらいほどですよ」(鷹松氏)

 光沢度に関してはJIS規格において屈折率1.567であるガラス表面に対し、入射角60°で光を照射した場合の反射光を出射角60°の場所で測定し、入射光の10%の光量が反射できている場合を光沢度100と定義している。入射角ごとに光沢度100の定義は異なるが60°が用いられることが多い。なお、光沢度は数値が高いほど光沢感が強いことを表す。日本では数値のみや「%」で表されることもあるが、欧米ではGU(Gloss Unit)がよく用いられるようだ。

 筆者が自身で調査を行った範囲では、一般的なガラスコーティングの場合は(材質やコーティング層の厚みによっても異なるが)、だいたい70〜90GUくらいとなっていた。XPELのULTIMATE PLUSの場合は公称値で90GUなので、ボディーコーティングと同等ということになる。

 「最近、高級スポーツカーとかでマットカラー(つや消しカラー)が流行してますよね。既存の「光沢感ありのボディーカラー」を一切の再塗装をせずにマットカラーにできる「つや消しPPF」がFlex ShieldやXPELからリリースされています。そうした「つや消しPPF」を利用すれば、逆に光沢カラーに飽きたユーザーがPPFを適用しつつ気分転換でマットカラーを楽しむこともできます。ちなみに、マットカラーのボディーに対して普通のPPFを適用すれば逆に光沢カラーに変身させられますよ」(鷹松氏)

photo Flex Shield製のつや消しPPFのサンプルを見せてくれた鷹松氏

 つまり、色そのものの変更はラッピングに頼る必要があるが、光沢感、マット感の変更であればPPFでも楽しめると言うことだ。これは筆者も知らなかった。確かに面白い。

光沢カラーの車をマットカラー化できるXPELのPPF「STEALTH」

 紫外線などへの対抗力(≒耐候性)はどうなのだろうか。俗に言う「紫外線カット率」というやつだ。そのカット率の高低は「塗装面の保護」にダイレクトに影響する。ちなみに、ボディーコーティングは紫外線カット率90%以上をうたうものが多い。

 「PPF最上層のハードコート層(クリア層)が紫外線をカットしますから、基本的にはボディーコーティングと同等だとお考えください」

 確かに、大手メーカーのPPFはだいたいUVカット率90%以上をうたっていた。塗装面の耐候性向上目的でPPFを選択するのも悪くないと思う。

 こうして見てくると、PPFは「ボディーコーティングの効果に「高い耐飛び石性能を付与したもの」という「ボディーコーティングの上位版」のイメージを抱いた人も多いと思う。

 「確かにそうですが、先ほどお話ししたように施工費用がお高いというのがありますね。それと“実体のあるフィルム”を車のボディーに貼り付けていく……という構造である以上、特にフロントバンパーのような複雑な形状に対してはPPFを凹凸面単位でカットして適用することになり、PPFの“継ぎ目”が発生します。その継ぎ目を目立たなくしていくことこそ、PPF施工店としての腕の見せ所ではあるのですが、完全になくすことはできません。まあ、PPFは透明なので遠目に継ぎ目が分かることは全くありませんけども」(鷹松氏)

 この「継ぎ目」隠しをはじめとした施工技術の話題についての詳細は後述する。

 さて、ユーザーの立場からすると、気になるのは「PPFの寿命」だろう。

 いちおうXPELサイト上のFAQによると、ULTIMATE PLUSだと10年間の耐用年数があるとうたわれている。

 PPFの樹脂フィルム部分は各メーカーごとのレシピは異なるが、いずれもポリエステル系やポリウレタン系の素材を採用している。一般的に樹脂フィルムは、紫外線に弱い性質があるが、前述したように、PPF最上層のハードコート層の紫外線カット効力と、各メーカー独自レシピによる樹脂フィルム劣化対策の複合技で、陽光を受け続けたことによるPPF自体の黄変現象(樹脂材質のものが紫外線を受けて黄色く変色する現象)は、最新PPFではかなり抑えられているとのことだ。

 まあ、そうした「耐用年数」とは「PPFの素材自体の寿命」のことであり、「愛車に施工されたPPFがボディーに貼り付いていられる保証時間」ではない。いわゆる「その施工」に対する品質保証については「施工店ごとに違う」ということになる。

 ちなみに鷹松では明確な品質保証期間を設定していない。ただ、施工後、数カ月で剥がれ目が出てきてしまったときなどは無償も含めた応相談で部分再施工などを行ってくれる。筆者の場合も、施工後3カ月後に出てきた運転席側のドアミラーのエッジなどの剥がれ目などは無償で補修していただけた。なお、大規模施工店では1年や3年といった明確な保証期間を設定しているところもあるようだが、いずれにせよ、PPF施工を依頼する場合は、その工房ごとの保証条件は事前に確認しておいた方がよいだろう。

 「どんなにPPF自体の素材の品質が高くても、そのPPFの実質的な耐用年数は、結局、施工時の貼り付け技術、貼り際の処理の工夫のよしあしで変わってきます。なので、PPF施工を依頼する際は、ボディーコーティングと同様に、施工店選びが重要なポイントになってくると思います」(鷹松氏)

 さて、ボディーコーティングと見分けのつかない愛車の光沢と煌めきに、筆者も大満足だったわけだが、ユーザーとしては今後、PPFに対してどんなメンテナンスを行うべきなのだろうか。

 「ボディーコーティングは大体1年ごとの有償定期メンテナンスが必要になりますが、PPFにはそういったものは特にないですね。ただ、まあ、クルマが汚れたら普通に洗車をしてあげてください……というのはあります。ときどき“PPFを施工したら洗車をしなくてよい”と考えられているお客さまがいらっしゃいますが、それは誤解です。クルマは路上を走行すればそれなりに車は汚れますし、汚れたら洗車をしてあげる必要はあります。あえて注意点を申し上げるならば、“洗車を行う際には手洗い洗車でお願いします”……といったところですかね」(鷹松氏)

 PPFは、ボディー面に貼り付いてはいるが、その“貼り際”、すなわち「端っこ」は、水分に対して無敵というわけではない。貼り際は接着面と外界の境界領域であり、ここを洗車機などの回転ブラシによって引っかき回されるとそこに隙間ができ、そこから水が流れ入ってPPFの「剥がれ」を誘発しかねない。

 手洗い洗車をする場合は、「PPFの貼り際」に対しては気を使う必要があるということだ。

 なお、鷹松氏が話していたように基本的にはPPFはメンテナンスフリーとなっているが、専用のクリーニンググッズが各PPFメーカーから販売されている。ごく平常的な汚れは普通の水洗いで落とせるはずだが、もし、頑固な汚れなどに出くわしたときにはそうしたグッズを利用することになる。

photo XPEL PAINT PROTECTION FILM SEALANT。基本的にPPF水洗い洗車だけで問題ないが、取りにくい汚れが付着したり、より長い延命効果を狙いたときにはこうしたメンテナンスグッズを利用するといいだろう

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