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いまだに新車でボディーコーティングしてるの!? 現場のプロに聞くペイントプロテクションフィルム最新動向西川善司の「日産GT-Rとのシン・生活」(6/7 ページ)

» 2022年05月18日 10時25分 公開
[西川善司ITmedia]

ボディーコーティングとPPFは併用できるのか

 本連載前回でも触れたが、PPFは、クルマのボディー全体に施工することもできるが、予算に応じてボディーの一部を選択してPPFを施工する…といったことも可能だ。

 鷹松でもそうだが、ほとんどの工房で人気が高いのは、飛び石の被害に遭いやすいフロントバンパー、フロントフェンダー、フロントライト、ドアミラーまでを施工するパターンだ。このパターンで、車種にもよるがPPF代金も含めたトータルな施工費用は30万円から50万円くらいになる。

photo PPF施工店が提案している代表的なPPF施工範囲パターンの一例(筆者が今回、施工を依頼した鷹松のWebサイトより引用)

 筆者は、自分のR35 GT-R nismo Special Editionに対し、この定番「フロント周りプラン」に加えて、サイドステップ(サイドスカート)とフロントドア、ルーフをプラスで施工していただいた。

 サイドステップとフロントドアへの施工は、GT-R nismo系のサイドステップは外向きへの張り出し量が大きく、フロントタイヤの巻き上げた小石が当たりそうと考えたため。

 ルーフの方は、GT-R nismo系のルーフは、クリア塗装こそしてあるがカーボン素地柄が剥き出しでボディカラーがペイントされておらず、紫外線の影響を心配したため。カーボンパーツのカーボン繊維自体は紫外線に強いが、形状を司っている樹脂材質が紫外線に弱く、白亜化(白い粉を噴いて劣化していく現象)してしまうことがある。その劣化を少しでも遅らせられれば…と思い施工を決断した。

 PPFが適用されない、それ以外の部位については、鷹松でお勧めされたガラス系のボディーコーティングを行うことに留めた。

 費用は「フロント周りPPF施工」が43万4500円、「サイドステップPPF施工」が8万2500円、「フロントドアPPF施工」が10万4500円、「ルーフPPF施工」が9万3500円、その他のボディーコーティング費用が4万9500円で、総額76万4500円となった。いずれも税込価格。

 ちなみに、ボディーコーティングを外し、残された部分(リアフェンダー、リアバンパー、トランクフード)も全てPPFを施工すると、総額120万円(税込)となる。つまり、あと約40万円足せばフルボディーPPFが行えたのだが、今回は予算の都合でここまで。ちなみに、サービス(おまけ)として、リアウィング部のPPF施工とフロントのVモーショングリルのラッピング施工をしていただけた(ラッピングシートは筆者持ち込み)。

photo 純正色はメッキ加工されているVモーショングリルの部分を、個性を出すためにメタリックチェリーレッドでラッピング。
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photo リアウイングの翼端版の側面。ここのPPFは翼端版の上面部分に折り込まれている格好だ

 「太いタイヤをはいたスポーツカーは、自車の後輪が巻き上げた小石がリアウィングやリアバンパー、トランクフードに当たることがあるので、予算があればフルボディー施工がお勧めなんですけどね。もちろん、予算が確保できてから、時間差で、後でボディーの後ろ側を施工するといったことも可能ですので、ご相談ください」(鷹松氏)

 筆者がPPFに調べていた際に、「先にボディーコーティングを行って、その後にPPFを適用する」流れを勧めてきた工房があった。鷹松の場合は、ボディー部位ごとに「PPFかボディーコーティング、どちらか一方」という排他的な組み合わせでしかメニューを用意していない。PPFとボディーコーティングの同時施工と排他施工、それぞれにどのような理由があるのだろうか。

 「他の業者さんのことはよく知らないですが、自分の場合は、PPFを施工するならば、そこにボディーコーティングは絶対にしませんね。ボディーコーティングはもともと汚れがつきにくい性質がある特質があるわけで、そうなると、PPF接着の定着が弱くなるんですよ。つまり、ボディーコーティングの上にPPFを張り付けると剥がれやすくなるんです。まあ、業者の中には、両方の施工費を取って儲けを大きくしようとするところもあるのかもしれませんが……。同一箇所に両方施工は自分ではちょっと考えにくいですね」(鷹松氏)

 ボディーコーティングとPPFの「重ね掛け」は見栄えの点で効果があるのか。これについて鷹松氏に確認してみたが「光沢度の観点からは、どちらか一方でも全く変わらないと思う」とのことであった。もし、PPFをお願いした工房で、同一箇所への「重ね掛け」を勧められた場合は、その理由を聞いた方がよいかもしれない。

 では、鷹松では、ボディーコーティングが適用済みの車両が持ち込まれた場合はどうするのだろうか。

 「少なくとも、PPFの貼り際となるボディーのエッジ周辺はコンパウンドで磨いてボディーコーティング剤を磨いて落とします。そうしないとボディーコーティングの性能が邪魔をしてPPFがそこから剥がれやすくなりますから。ボディーコーティングが成されていない車両でも、PPFの定着が難しそうな場所については、PPFが剥がれてこないように軽く磨くことがあります。それと自分は、PPF貼り付け前にボディーパネルを注意深く観察して、軽微な傷がクリア層に発見できた場合は、そこを磨いて傷を消してから適用しています」(鷹松氏)

photo 鷹松氏はPPF施工前には、必ず、ボディー面に強いライトを当てて“小傷”がないかチェックするのだという。小傷がクリア層に留まるものであれば、それらを軽く磨いて消してからPPFの施工を行う

 最後に、鷹松を利用するメリットについて聞いてみた。

 「約10年のPPF施工実績があることと、あとは16年以上、数多くの高級スポーツカーを取り扱ってきた経験でしょうか。車種ごとの施工のコツ…のようなものは積み重ねてきた自信があります。あとは、高級車を取り扱うことが多いので、セキュリティには気を使っています。セコムの警備サービスには加入していますし、それと、うちはすごく近くに警察署がありますから、そこも安心できるポイントかと思います(笑)」

 全く初見のお客……“一見さん”の筆者に対して、PPF施工のみならず、快く取材対応もしてくださった鷹松代表の鷹松氏に感謝の意を示しつつ、本連載のPPF編は今回をもって終了としたい。

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