西田 じゃあ、Engadgetの編集長になって、変わったことってありました?
矢崎 実は、アスキーの中で1回がらっと変わってて。それはやっぱり紙からネット、というのがあったから。
キャリアの半分以上は超アナログだったんだよね。もちろん、取材も。
僕は取材に行って――紙媒体の人とWeb媒体の人ってやっぱりちょっと違うじゃない。取材先でもさ。
Web媒体の人、速報をやらなきゃいけない人はその場で更新してたりとかしてたじゃない、当時からもう。H゛(エッジ)でつないだりとかして。
西田 はいはい。
矢崎 それは、「ああ、すげえな。これから報道はこうなるんだな」という刺激にはすごくなったけど、自分自身はやっぱり紙の雑誌で、毎週1回の締め切りに対して全力を尽くす、というのをやってた。
僕ね、今でもよく覚えてるんだけど、たぶんXboxか何かの発表会(2002年)で、ビル・ゲイツが日本に来たじゃないですか。
西田 来ました来ました。
矢崎 あの時に、Ittousaiだったかどうだったか分からないんだけど、Engadgetがね、真横でリアルタイム更新してたのが見えたの。
で、「すげえ!」と思って。
これからはこうなるんだな……と思って、そういうのが刺激になった。
部数がずっと右肩下がりだったというのもあるんだけど、福岡さんが、「ネットに存在しないもの、Googleで検索できないものはもう存在してないに等しいよね」みたいな話をしてたから、週刊アスキーも、ネット……週刊アスキーを続けたまま、ネットに何か取っ掛かりがないとダメだな、と思って。
週刊アスキーの情報をどんどんWebに掲載しよう、と思ったんだけれども、アスキー社内には「ASCII.jp」というのがあったのね。「ASCII24」だったかな、当時は。
なかなかやっぱり、部署も違うし、向こうは向こうで広告がまた別に走ってるし。
今は一緒になってるけれども、思うようにはできない、自由にはできないところもあって。
伊藤(有)くんと、今はnoteにいる坂本(洋史)くん、あとはまだアスキーにいると思う三宅さんという人と私の4人で、もうほぼ勝手に。
西田 勝手に。
矢崎 社内稟議も何もなく。
週刊アスキーの――もともと目次だけ載せてたサイトがあるんだけど、そこを勝手にテイクオーバーというか、自由に活用する形で、「週アスPLUS」というのを立ち上げた。
4人でデニーズで会議して、「ゆくゆくはここをjpをしのぐポータルにしよう」みたいな感じで、すごく力を入れてやった。
そこからがWeb媒体のキャリア。
紙媒体とWeb媒体のキャリアがそこから並行していって、で、紙がなくなって。
僕はWebでやるのかな、と思ったら、このタイミングで社内競合を言われて、結局「ASCII.jp」に飛ばされて。
僕はまあ……やることがなくなっちゃったわけ。
2015年5月に週刊アスキーが休刊してからは、2016年12月に辞めるまで、僕はよく「干された」みたいなことを言ってるんだけど。
付録を作って「週刊アスキー」の部数を全盛期と同じぐらいまで上げたりとか、「週刊アスキーPLUS」の功績とかがあったから。「ASCII.jp」と並ぶぐらいのPVを出した、急成長したサイトとしてKADOKAWAで表彰されたりとか、スマートニュースとかでも賞をもらったりとかしてて。
今思うとね、それも違うなと思ってて(苦笑)。うぬぼれてたんですよ。
全然……僕が間違ってて。アピールも全然足りないし。
西田 これがやりたいんだ! みたいな。
矢崎 そうそう。アピールもしてないし、事業計画も出してないし。
まあ……幼稚だったな、というか。今だったらそれが分かるんだけどね。当時は、「なんだこの会社は」と思って(苦笑)。
西田 はははは。
矢崎 ふてくされてたところに、Engadgetから、前編集長から声がかかったんだけど、渡りに船で、「やります!」と。
で、この5年間やってくわけなんですけども。
表現の面で紙媒体の経験は役に立ってると思うし、紙媒体自体のお付き合いのあるPCメーカーさん、スマホメーカーさんとも引き続き懇意にさせていただいてるので、人脈的なつながりは継続している。
けれども、Web運営というのに関しては週アスPLUSで培ったキャリアというのを、Engadgetの5年はより洗練された形で、もう1回やった、という感じですね。
アフィリエイトもやってなかったんですよね、(当時の)Engadget。今はアフィリエイトの収入が広告を上回ってるけれども、それすらやってなかった。「じゃ、それをやろうよ」と始めて。
あとは連載というのをやってなかった。
だから連載もやりましょうと。
ただ単に、ブログをWebで垂れ流すだけだったので、「週刊アスキーPLUS」でやってきたような親しい人たちにお声がけして、連載をお願いして。あとは、速報により力を入れる、というのをやった。
本当に綺麗にもう一周やった感じ。
新しく何かをやったといったら、週刊アスキーの時に付録を作ったじゃないですか。
ものづくりがすごく好きなのと、CEATECやCOMPUTEXのアワードの審査員とか、アプリコンテストのアワードの審査員とかもやらせてもらってるので、やっぱりものづくりに対して意見を述べる立場になりつつあった。なので、いちばん最近は富士通さんとキーボードを作りましたけども、それ以外にもケースメーカーさんの製品だったりとか、クラウドファンディングのコンサルみたいなことをやって。それはほぼ個人的に。
一応アフィリエイトの収入とかはあったけど、自分自身のキャリアとして、ものづくりに寄っていった……というのがこの5年間です。
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