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相次ぐ通信障害、巻き込まれる企業の“生存戦略“を考える(3/4 ページ)

» 2022年07月06日 16時00分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

コネクテッドカーは将来大きな課題に

 これからのことを考えると、より大きな課題となるのは「コネクネッドカー」での対応だ。

 今回の場合、実は被害は限定的だ。

 トヨタやスズキ、マツダの車種で影響が出たものの、オペレーターへの問い合わせや自動車からの緊急通話サービスの不通が中心。あとは、エアコンの遠隔操作などが不能になったという。すなわち、VoLTEの障害に伴う「音声回線を利用した機能」が止まったわけだ。それはそれであってはいけないことなのは事実だが、自動車自体の利用に甚大な影響があったわけではない。

トヨタとスズキのコネクテッドサービスが一時利用不可に

 現状のコネクテッドカーはあくまでドライバーの操作が優先であり、ネットワークから切り離された状態でも問題なく操作できる。「通信トラブルでコネクテッドカーに問題」という文章から受ける、操作不能や利用不能、といった形ではないのだ。ただし、有料駐車場の決済に問題が出た結果として自動車を使う上で影響があった……という事例は存在したようだ。

 とはいうものの、将来を考えると、通信と自動車の関係はより深刻に考えておく必要がある課題だ。

 現在、自動車と周辺環境の高度化に伴い、「V2X」と呼ばれる通信環境整備の検討が進められている。V2Xとは「Vehicle to Everything」の略で、車と人、車と道路、車と車などの間で通信を常に行うことで、自動運転の高度化や移動先情報の可視化を実現するのが狙い。車が搭載しているセンサーが把握している数十メートル以内よりも遠くの自動運転前提、もしくは完全自動運転車の走行では1つの前提となる社会インフラといえる。

 V2X向けには複数の通信方式が検討されているが、有力なものの1つとして「C-V2X」がある。Cは「セルラー」のCで、要は携帯電話技術(LTEや5G)を使った通信だ。高速移動時にも利用可能であること、広域対応が比較的容易であること、そして、携帯電話関連メーカーに新たなビジネスを生み出すことから注目されている。

携帯回線を使う「C-V2X」(引用:ソフトバンク

 携帯電話技術を使うため、C-V2Xは携帯電話網のトラブルから影響を受ける可能性もある。

 しかし、C-V2Xは既存の携帯電話帯域以外(現在は5.9GHz帯が有力)を利用する専用通信となり、システム構築もこれからだ。だとするならば、ここまでの大規模障害の反省を受けてシステムが構築されることになり、もちろん配慮はされるだろう。その経過がどうなるか、しっかり確認していく必要がある。

 自動車はそもそも危険なものだ。だから、リアルタイムかつローカルでの事故回避などの機能が盛り込まれている。それらはネットワークが切れても生きているし、人の手で運転をオーバーライドしたり、停止させたりすることは可能な仕組みになっている。

 おそらく重要なのは、V2Xによる高度な自動運転・運転支援に、ドライバーも歩行者も慣れた頃、大規模障害が起きた時の「心構え」だ。要は現在の環境に近くなるわけだが、そこで慌てずに対応する意識は必須だ。まだしばらく先の未来だが、そこに向けて「対応マニュアル」を作ることも必要になってくる。

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