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“未来の教室”ってどんなの? 「GIGAスクール」が定着した教育現場の姿 体験して分かった価値と課題(2/3 ページ)

» 2022年07月29日 07時30分 公開
[渡辺まりかITmedia]

「デジタル教材」で実現する、生徒にも教師にも優しい学び

 未来の教室を紹介したので、次は授業で使う教材に目を向けてみたい。教育のデジタル化に合わせて期待されるのが、教科書などの電子化だ。従来の教科書は印刷済みの内容を学ぶものだったが、デジタル教科書ならデータを更新したり解説動画を挿入したりしてより深い学びをサポートできる。

 さらにランドセルメーカーのセイバンの調査では、小学1〜6年生のうちランドセルを使う生徒の荷物の重量は平均約4.7kgだった。ランドセルも含めると、毎日約6kgを背負って登校しているという(※3)。この重量の原因は、教科数や教科書のページ数が増えたことだ。各教科のノートや計算ドリルといった副教材も含めると、相当な重さになる。

※3 セイバン「小学生の荷物の重さとランドセルに関する調査」(調査期間は18年3月28〜29日、サンプル数は2000)より

 そうした「紙の教材」を1台のタブレットに集約できれば、生徒の負担は軽くなる。そんな紙の教科書に代わる候補の一つが、大日本図書のデジタル教科書だ。同社では紙面をデジタル化しただけのものと、動きのあるコンテンツを収録して内容を拡充したものの2種類がある。

 紙面をデジタル化しただけといっても、一般的な電子書籍のように拡大縮小などのリフローに対応しているし、テキストと背景の白黒反転やテキストの読み上げなども可能で、アクセシビリティーに配慮している。

Webブラウザ上で解く学習用ドリル 自主学習や復習に活用可能

 NEE2022では、学習用ドリルを端末上に再現したコンテンツも展示されていた。内田洋行が開発した「ドリルタイム」は、Webブラウザ上で練習問題を解ける教材だ。生徒は学習したい教科を選び、授業進度に合わせて単元を選択する。その後、ドリルタイムが出題する5〜10の設問に回答することで学習に役立てられる。

photo 単元の習熟度チェックなどを短時間で実施できる

 1単元の所要時間は5〜10分ほどだ。自宅での繰り返し学習や授業のすきま時間、朝自習の時間などに使える。クリックするたびに設問が変わり、同じ設問でも選択肢の順番を入れ替えて出題するので、番号を暗記することはできない。教師が自習用の問題作りやプリント作成などをしなくても済むため、業務の効率化にもつながる。

 このドリルタイムはクラウド経由で提供しており、1人あたり年額450円で利用できる。小学校版は1〜6年生までの5教科、中学校版は1〜3年生までの5教科に取り組める。例えば中学2年生になってから、中学1年生で学んだ数学の振り返りをするといった使い方も可能で、学年に縛られず学習できる。

photo 小学校版では、全学年の主要5教科(国語、算数、社会、理科、英語)を学べる
photo 生徒が使う個人用画面。教師側ではクラス全員の学習状況を把握できる仕組みになっている

小学校ではプログラミング教育が必修に サポート教材も続々

 教材の観点で無視できないのが、プログラミング学習を支援する教材だ。小学校では20年からプログラミングが必修科目になった。学習指導要領では算数と理科、総合学習の時間にプログラミング学習を取り入れるとしている。

 例えば、算数では正多角形を学ぶ段階で、理科では電気の特性について学ぶときに省エネとひもづけた学習を行うといった具合だ。

 こうしたプログラミング学習をサポートする教材も登場している。ソニーが提供している「toio」(トイオ)はプログラミング的思考を身に付けられる教材で、小学校低学年から中学生が対象だ。小学校低学年向けは、視覚的に分かりやすい操作画面「トイオビジュアルプログラミング」上で「めいれいカード」を組み合わせて、キューブ型のロボット「toio コア キューブ」を動かす。カードにある「めいれい」を読み込みながら、指示した命令通りにロボットが動く仕組みだ。

photo

 小学5年生では算数の項目「正多角形」に関連した学習の一環で、PCやタブレットを使ってtoio コア キューブが正多角形を描いて動くようにプログラミングする。まずはトイオビジュアルプログラミング上で進む数(距離)や曲がる角度などを入力する。そしてドットと罫線(けい線)から成るマス目が描かれた「ビジュアルプログラミング用マット」の上にtoio コア キューブを置くと、プログラミングした通りの軌跡を描いて移動する。タイヤがマット上で滑ってしまったとしても、マットのドットを読み込んでいるため移動距離がずれることはない。

正四角形を描きながら移動するtoio コア キューブ

ソニーの「MESH」はWebブラウザに対応 背景に「Chrome OS」の導入拡大

 同じくソニーが手掛ける「MESH」(メッシュ)は、プログラミング教育の分野では有名な教材だ。スイッチ、人感センサー、明るさを検知するセンサーといった7種類のIoTブロックを使って、実践的な成果物を作れる。例えば、省エネを考える理科の授業で活用した例では、照明のオンオフを人感センサーや照度でコントロールする試みを実践した。その他の使い方は、公式サイトでさまざまな事例を紹介している。

 これまでMESHを使うには専用アプリのインストールが必要だった。しかし各自治体が導入した学習用端末のシェアをOS別に見ると、Webブラウザの利用を前提にした「Chrome OS」が約40%を占めている(21年7月速報値)。そこでソニーは「ブラウザ版MESHアプリ」の提供を21年6月にスタート。同年12月にはWindowsのMicrosoft Edgeにも対応し、これまでより多くの教育現場で活用可能になった。

photo MESHで使う7種類のIoTブロック

レゴで作った車を走らせる レゴ×プログラミングの教材

 知育玩具でおなじみのレゴブロックを活用したプログラミング教材「レゴ エデュケーション」シリーズも展示してあった。ブロックで自動車などの乗り物を組み立てて、動作をプログラミングする。

photo LEGO レゴ エデュケーションシリーズ。通常のレゴブロックと互換性があるので、シリーズのキットに入っていないブロックとも組み合わせられる

 1つのセットに付属するのは、スモールハブと呼ばれる極小のコンピュータやタイヤ付きモーター、カラーセンサー、LEDライトマトリクスなどだ。スモールハブは2系統の入出力ポートと、傾きや回転を検知する6軸ジャイロセンサー、Bluetooth接続機能を備えている。ブロックで作った乗り物にこれらを搭載すれば、プログラミングしたコマンドを受け付けて動くようになる。

 プログラミング用のソフトウェアは難易度に合わせて2種類用意している。文字ではなくブロックの見た目で直感的にコマンドを組み立てられる「アイコンブロック」(低学生向け)と、プログラミング言語「Scratch」をベースにした「ワードブロック」(高学生向け)だ。

 レゴブロックを使って自分たちの住む町を再現して、車を走らせる(社会科、総合)、スイッチを使って実験器を制御する(理科)といった活用方法を想定している。

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