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文章を書くことと「ポメラ」という道具の奇妙な関係 その誕生から14年で「文房具」に到達するまで(2/6 ページ)

» 2022年07月31日 07時00分 公開
[納富廉邦ITmedia]

「長文のテキストを書く」という需要

 この2008年や、「DM20」が発売された2009年というのは、Webでテキストが最も読まれた時代だったと思う。SNSにしても、TwitterやインスタグラムはiPhoneの普及以降にユーザーを増やした訳で、この頃は、ネットを活用している人の多くは、とにかくテキストを書き、読んでいた。だからこそ、「長文のテキストを書く」という需要に、ポメラはハマったのだ。

 もっとも、ここで言う「長文」というのは、例えばブログの1回分だったり、ミクシィへの投稿だったりなので、1ファイル2000文字から5000文字程度。それ以上の長文については、やはり、PCで書くのが主流だったのだけど、そういう長文はプロやマニアでなければ書かない。長い文章は、キーボードの打ちやすさや、画面の大きさなどが、かなり重要になってくるので、ポメラはあくまでも入力補助のツールではあった。

 だからポメラは「デジタルメモ」として登場したし、キングジムも多分、長文を書くユーザーがそんなに多いとは思っていなかったと思う。

 スマホが普及し、ブログからSNSへと時代が変わっていく2010年には、既にポメラは迷走するというか、スマホの普及をガジェット人気の高まりと思ったのか、声が大きいユーザーはガジェットファンに多かったからか、ガンダムコラボとか、ケース一体型とか、何というか、機能よりデザイン、道具よりガジェットという方向に進む。

photo 女性ターゲットにしたDM5(2010年発売)
photo 「DM11G」シャア・アズナブル モデル

 しかしこれは、単に、ブログとかを書くユーザーは、「DM20」があれば十分こと足りたということなのだ。ポメラは、テキスト入力マシンであり、それ以上の機能がないからこそ、多くの人が使いたいと思ったわけで、その意味で、機能アップというのがとても難しいハードウェアなのだ。

 そして、文章を書きやすくしようと思うと、結局、画面を大きくしたり、キーボードをより打ちやすくしたり、他の環境との連携を強化したりすることになり、それは、PCやスマホへと向かうことにしかならない。

 ただ、ガジェットファンは、高機能とかギミックが好きなので、結局、新しい機種を出そうとすると、そちらを向くほかなかったのだろう。その結果、「文章を書く」という方向からは逸れてしまう。

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