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文章を書くことと「ポメラ」という道具の奇妙な関係 その誕生から14年で「文房具」に到達するまで(5/6 ページ)

» 2022年07月31日 07時00分 公開
[納富廉邦ITmedia]

書き味が良いキーボード

 筆者はよく、万年筆やボールペンの書き味にこだわるなら、同じくらいキーボードにもこだわらないのはどういうことだろうと思っていた。また、「書き味が良い」というのは、書いている手に伝わる感触が気持ち良いということなのか、長時間書いても文字が乱れず疲れないということなのか、正確に書きたいところにペンが行くということなのか、具体的には何を表しているのだろうと思っている。

 筆者の場合、求めるのは、ペンなら、書きたい場所に不要な力を入れずにスムーズにペンが走ることだし、キーボードなら、長時間打っていても疲れにくくミスタイプしにくいことを「書き味が良い」と思う。

 ポメラの「DM250」のキーボードは、普段愛用しているPFUの「HHKB Professional HYBRID Type-S」には及ばない。

photo 筆者愛用のPFU「HHKB Professional HYBRID Type-S」

 だが、薄型のキーボードとしてはかなり楽に打てるし、画面が見やすく文字の拡大ができて白黒反転もできるため、目からのフィードバックが良好で、その分、ミスタイプや言葉の選択ミスも少ない。つまり、携帯する筆記具として、かなり優秀なのだ。

 よく、ポメラはネットにつながらないから、文章を書くことに集中できるというけれど、今や、文章を書くのに全くネットを参照しないということはあり得ない。

 ポメラで書いていてもスマホは見るし、スマホで検索するし、その他資料をDropboxから引っ張ってスマホで表示したり、そもそも、ポメラは外で使うことが多いから、コーヒー飲んだり、風景見たり、カフェで隣の人の会話に耳を傾けたり、いろんなことをするから、大して集中に変わりはないのだ。

 筆者は、長い文章は集中するより、多少気を散らした方が、視野が広くなる分、結果が良いと思っているから、積極的に気を散らしたりする。それでも、やっぱりポメラがネットにつながらないのが良いと思っているのは、ネットからのコピペが出来ないことがメリットだと思っているから。

 資料を参照するにあたって、直接コピペできると、引用には便利だけど、引用ではなく参照するなら、絶対、コピペできない方が良いのだ。資料を読む→自分の言葉で書く、という流れは、その先を書くのがスムーズになるし、無意識にやってしまう安易なパクリも避けられる。手書きの魅力も、この「コピペできない」ことにある訳で、そこでもポメラは最終的な出力がテキストファイルであるという以外は、普通に筆記具なのだ。

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