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「おわびのバラマキ」から卒業すべき? KDDI通信障害の「200円返金」を考える(2/3 ページ)

» 2022年08月02日 15時00分 公開
[西田宗千佳ITmedia]

KDDI「おわび」額算定の基準は?

 では、「おわび」は?

 KDDIに返金の義務があるのは約款で定められた条件に当てはまる人々だけ、すなわち「音声通話サービスのみの契約者」である。だが、普通はスマートフォンで使うために、データ通信と通話をセットで契約している。そうするとあくまで約款上は、「データ通信はできているのだから24時間以上連続して通信サービスを利用できなかった、または利用できない状態と同程度の状態だった」とはいえなくなる。

 しかし、トラブルに見舞われた人々はそれでは納得しづらいだろう。

 そこで「本件の重大性や影響の大きさを真摯に受け止め」(KDDI高橋社長)、KDDIの自主的な判断として、約款返金対象外の契約者にも「おわび」として返金が行われることになった。

 額は「200円」と定められているが、この根拠となっているのは、「音声通話のみに契約している人」への返金額である。

 前出の通り、この額は1日あたり一人平均約52円。「おわび」については障害期間を「3日」と定め、3倍の約156円を基準とした。それを丸め、幅広い利用者への返金額として「200円」を定めた……という経緯である。

 どちらもKDDI側で処理した上で、9月以降、契約者への請求から減額する「返金」の形で処理されるので、利用者側は何もする必要はない。KDDI側からは対象となる利用者が確定し次第、8月中旬以降に順次、利用者にSMSの形で通知される。前述のように利用者側で行う作業は何もないので、このSMSにはWebへのリンクもなく、個人情報の入力も求められない。KDDIからの返金を名乗るフィッシング詐欺なども想定されるが、「Webへの移動や個人情報の入力を求められたら偽物のSMS」である。この点はみなさんも周囲への周知をお願いしたい。

 なお、基本料金がゼロ円である「povo」の場合同じ基準での「おわび」算定が難しくなるので、3日間1GBのデータ量提供(通常は390円)となる。

おわびの「200円返金」は妥当なのか

 問題なのは今回の「おわび」額が適切なものであるかどうかだ。

 総額73億円、という額は大きいものだが、200円という個人への返金額は小さい。算定基準となった「音声通話サービスのみの契約」の月額基本料金が安価であるためでもある。

 2013年、KDDIがデータ通信に関する障害に伴う返金を行なった際には、約款に基づく返金金額が「700円」と高かった。しかしそれは、当時のデータ通信に関する基本料金が高価であったため。今回とは前提が異なる。

 正直筆者としては、金額の多寡にはあまり興味がない。「障害の時間」を算定基準にすれば結局2、3日分の通信費がベースになる。それで高い額になるはずがないからだ。

 そうすると議論の軸は「障害を受けていた時間で算定されるべきなのか」ということになる。利用者の意識としては、使えないのが1日であろうが2日であろうが、その間迷惑を被ったのだから補償して欲しくなる気持ちは分かる。

 だが、それは無理筋だ。サービス料金とは「どれだけそのサービスを安定させて提供するか、企業と契約者の約束」をベースに決まる。その約束が「約款」である。

 企業としてもできるだけ障害が起きないように努力はしているが、避けられない・予測できないものもある。約款はそれを織り込んで作られたもので、「携帯電話の利用料金」として、その一端が分かりやすく提示されている。

 まったく途絶えることなくサービスを受けたいなら、やはり利用する側が相応の対策をして、それに合わせた費用負担を行うのが筋ではある。固定回線を含め、複数の回線を用意するのはその一例と考えるべきだ。

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