そもそも、「おわび」には基準がないし、本来は規定されていない行為だ。その上で「おわび」をしているのは、彼らが顧客に「離れて欲しくない」と思っていることに加え、新規顧客に対して「反省と対応の姿勢を示している」部分があるだろう、と考える。
KDDIの高橋誠社長は7月29日の会見でこう答えている。
「解約の数字はそれほど大きくなっていないが、新規ユーザーに関しては影響が出ている。再発防止をしっかりやって、長年お付き合いいただいているお客さまの信頼回復を優先しながら、新しいお客さまにも来ていただくということに、全社を挙げて取り組んでいきたい」
そのための禊であり、マーケティング費用が73億円、と言ってもいいだろう。73億円は自社の営業努力から捻出する、としているが、性質を考えれば当然ではある。
逆に言えば、一人当たり200円程度の返金がある種の広告だとすれば、そこまで意味があるとも思えない。
SNSなどを見ると、返金額の小ささにクレームを入れている人も見受けられるが、それ以上に多いのは「200円程度の返金で73億円も使うなら、それは回線安定などに使って欲しい」というものである。
筆者もこれに同意する。過去から続く「おわび返金」について、企業もそろそろ考え直す時期に来ているのではないだろうか。200円払えばOK、500円払えばOK、という話ではない。消費者に納得してもらうためのコミュニケーションとして費用負担する、というのは分かるが、それは「おわびのばらまき」でいいのだろうか。
消費者の側も「おわび返金ではなく、別の形での有効な予算活用」を求める段階に移行すべきだと考える。もちろん、「おわび」に使われるはずだった予算がどう使われるのか、ちゃんと報告が伴った上で、だが。自社の設備拡充でもいいし、今回話題となっている「緊急通報のローミング整備」へのプール金とするのもいいだろう。ネット回線は生活インフラなのだから、そろそろ発想の転換をして、「トラブルを先へ進めるための力に変える」ことはできないものだろうか。
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