AI絵画というか、Midjourneyが一気に大流行(はや)りです。これは先行して話題となっていたOpenAIの「DALL・E2」がいつまでもたっても順番待ちの状態であったところに、Discordで登録すれば、回数制限はありつつも、AI絵画をとりあえず試すことができることができたというところが大きいでしょう。
そして何よりも適当な文字列を入力するだけで、それなりに見られる程度のクオリティーと多様性のある絵画がさほど待つこともなく生成されるというMidjourneyの体験そのものが楽しかったということに尽きるでしょう。
私も何度か試してみて、AI絵画の可能性のことを夢想しましたし、英語圏のAI絵画のグループにアップされているAI絵画を見ていると、やはり英語ネイティブの人たちが編み出してくる出来栄えの良さにうなだれたりもしました。
と同時にMidjourneyでAIに対して使う呪文もついても解析が進んでおり、すでにツールのようなものも開発がされています。
AI絵画が絵画という世界になぜショックを与えているのかというと、とにかくこれまで絵画では必須であった画材やテクニックも(アナログでもデジタルでもそこは同じ)が一切不要である点です。
AIにこんなことをされてしまっては、これまでつちかってきたテクニックが無駄になる、それを身につけるためにやってきた努力とはなんだったのか、絵描きの職業が奪われてしまうという嘆きの声がたくさん出てくるのもむべなるかなといったところです。
ただ、絵画の歴史的に考えると、これとほぼ同じことは過去にもありました。それはカメラ(と写真)の登場でした。
画像を生成するところの細かいところを端折って、最終的な完成品ができ上がるまでの手順を整理してみると、カメラとAI絵画というのは、ほぼ同じであることが分かります。
スマホで世界中の人が日常的にカメラを使い、かつSNSなどにアップしている今となっては、絵画と写真を同列に扱うことに違和感がある人もいるでしょう。
でも、絵画史的視点でみれば、写真が明らかに絵画の延長線上にあるものであり、現代美術が今の形になっていることへのいくつかある影響の中でも、かなり大きなものを写真が占めていました。
今でも、スーパーリアリズムと呼ばれるものや紙に描いた実物そっくりな絵がSNSでよく共有されたりしていることからもあるように、写真のように描く技術というのは一定の評価を受けています。
しかし、カメラというものがなかった時代、職業絵画の中でもいちばん評価された技術というのは、現実そのもののように描く技術であったわけです。さらにその中でも重要だったのが、パトロンの肖像画です。現実の見た目そのままで描くだけではなく、若干不自然ではない程度に巧妙に盛ることも求められていたのは、まるで今のスマホの画像処理のようであるのが、なんとも歴史は繰り返す感のあるところです。
とはいえ、特別な一部の人だけではなく、かなりの人数の人類が毎日どこかに写真を公開しているという状況になるまで、写真の誕生から長い時間がかかっています。
AI絵画は、もちろんフルデジタルで最初からネットのある時代に生まれたものですから、写真ほどの時間がかかることはないでしょうが、それでも多くの人が日常的に使うようになるまでは、もう少し時間を要すると思います。
ということで、しばらくは何かしらの完成品を作り上げるための材料のひとつとして使われることが多いのではないかと思います。例えば、映画・ドラマ・CMなどで最近使われているバーチャルプロダクションの手法を写真に応用する際の背景をAI絵画で生成するなんていうのがあるでしょう。
Midjourneyを使って、背景用に生成した画像は、とある有名ゲームのタイトルを呪文としたもの。
Midjourneyの画像をPCで全画面表示にして、倍率や位置などを調整。そのPC画面の前に、素組したプラモデルを透明のディスプレイキューブの上に載せて設置。最後はカメラを動かしながら、最適な位置を探してシャッターを切るという感じです。
今回は意図的に現像ソフトでの調整は行っていませんが、ここからさらに加工していくと、もっと精度が上がるでしょう。また、Midjourneyの画像を表示するディスプレイを湾曲ディスプレイにすると、もっと効果的になるかもしれません。
この使い方がAI絵画の副次的な使い方のベストな方法だとは、もちろんちっとも思っていませんが、いい背景があれば、もっといい写真になるのになあなんて思っている人がいれば、こういった使い方もあるかなと思ってご提案させていただいた次第です。
Midjourneyはその使い方の設計の巧みさもあって、加速度的にユーザーが増えています。そのうちきっと極上の使い方が出てくるのではないかと思っています。
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