ITmedia NEWS >

そろそろスポーツカーライフについて語ろうか(その1) クルマの美観を保つためのボディーカバー選び西川善司の「日産GT-Rとのシン・生活」(2/4 ページ)

» 2022年08月19日 20時28分 公開
[西川善司ITmedia]

クルマのボディーを劣化させる紫外線と酸性雨

 スポーツカーは乗って運転すれば、一般的なクルマよりも鋭い加速が楽しめて、それなりに速いスピード感が楽しめる。それはそうなのだが、やっぱり、スポーツカーはそもそも論としてデザインが美しいモノが多いし、見た目がかっこいい。だからこそその美しさを維持したくなる。筆者も、自分自身のファッションには気を使ったことがないが「愛車の見た目」だけには気を使ってきた(笑)

 それと、スポーツカーは(車種によって例外はあるが)、人気モデルや希少モデルはリセールバリューが高い。その際、見栄えの美しさが良ければ良いほど高額下取りが期待できるのはいうまでもなし。

 ということで、購入直後から「ボディーの見た目の維持」には気を使いたいところ。

 その基本方針として、ボディーコーティングやペイントプロテクションフィルムなどの施工については本連載の過去2回にわたって紹介済みだが、今回、アドバイスしたいのはそれとは別の話。

 いくらボディーコーティングやペイントプロテクションフィルムを施工していたとしても、青空下の野ざらし状態で駐車していたのでは、ボディー表面の劣化は進む。特に紫外線によるボディーの褪色は避けられない。よく、「最近は塗料の進化もあって、以前よりも褪色耐性が改善されている」と言われるが、それは「昔の塗料と比べて」の相対的な話。やはり最新の塗料でも褪色は起こるし、野ざらし駐車場であればその褪色スピードが早いのは同じ。

 それと、日本の高温多湿の気候を舐めてはならない。長年の人類の化石燃料の使用に起因した環境変動の影響もあり、日本の降雨期には、硫黄酸化物や窒素酸化物を含んだ酸性雨がクルマのボディーに降り注ぐことになる。

 今は対策されているが、日本の暑い夏期にはその気温の高さから、昔は、アスファルト路面がちょっと柔らかくなっていることを感じたことがあるかもしれない。実際、夏期の強い陽光を浴び続けるとかなり高温になって自動車の塗装面も軟化する。その軟化した塗装面に微量の酸性雨が侵入し続けると塗膜を加水分解し始め、塗装面に微細な穴(ピンホール)や突起(ブリスター)が出始める。こうした部分にさらに雨粒が侵入して行くとダメージは拡大する一方だ。飛び石による傷があれば、そこは特に酸性雨の進入経路になりやすい。

 スポーツカーはボディー部位によってはガラス繊維を用いたFRP(Fiber Reinforced Plastics)やカーボン繊維を組み合わせたCFRP(Carbon Fiber Reinforced Plastics)などの素材が用いられているが、これも紫外線や雨粒の攻撃に弱い。白濁化したり、微細な突起や穴が出やすい。

 しばしば「カーボン製ボディーパネルは経年で白濁化しやすい」といわれることがあるが、あれは間違い。実は、ガラス繊維やカーボン繊維の劣化よりも、混合されている樹脂部分が先に劣化して白濁化している。

 FRP/CFRP製のボディーパネルだろうが、金属製ボディーパネルだろうが、塗装面より下に水が浸透しまえば同じ。水の浸入経路から離れたところに水分が侵入する。FRP/CFRP製であれば加水分解を起こすし、金属製ならば錆びを生じることがある。

 そこそこ長く乗っている愛車があるならばボンネットやルーフ部を注意深く観察してみよう。もしも、キュウリの表面のトゲにも似た、微細なブツブツが出ていたら、それは塗装面より下に浸透した水分が原因で発生するブリスターと呼ばれる塗膜の劣化現象だ。

 これを修復するには、基本的には、その面を全塗装し直すしかなくなる。広範囲に出ていれば、部分補修ではすまなくなるので、当然費用は嵩むことになる。

photo ブリスター現象が起きる仕組み。なお、ブリスター現象は塗装時に侵入していた微量な水分によって引き起こされることもある。画像はロックペイント「自動車補修塗装ハンドブック」をもとに作画
photo ボンネット、ルーフ、トランクフードに出やすいブリスター現象。写真はその出始めの状態。最初は直径1mm前後かそれ以下の微細なポツポツが現れ始める。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.