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量子コンピュータのパワーをサブスクで利用しやすく NECが“疑似量子計算クラウド”を価格改定 従来の1/4程度に

» 2022年08月29日 15時37分 公開
[吉川大貴ITmedia]

 NECは8月29日、量子コンピューティング技術の一つ「量子アニーリング」を取り入れたソフトウェアを、スーパーコンピュータ上で動作させ提供するクラウドサービス「NEC Vector Annealing サービス」について、料金体系などを11月1日に刷新すると発表した。これまで企業ごとに個別で定めていた料金を、プラン別に共通化。各プランをサブスクリプション形式で提供する。

 一定の計算性能を他ユーザーと共有して使う「スタンダードプラン」と、独占して使える「プロフェッショナルプラン」を提供する。月額料金は順に25万円と125万円。

photo 各プランの月額料金や提供開始時期

 同様のサービスをオンプレミスで使いたいユーザー向けに、ソフトウェアのライセンスを有料で提供する「オンプレミスプラン」も用意する。クラウド型の2プランに先駆け、9月1日から提供する。料金は月額200万円。利用に必要なスーパーコンピュータは別途販売する。

 量子アニーリングは、多数の組み合わせから最適なものを選ぶ「組み合わせ最適化問題」の解決に特化したアルゴリズムだ。物流業務における配送ルートの策定や、勤務シフトの最適化といった分野で活用が期待されている。

 NEC Vector Annealing サービスは量子アニーリングのアルゴリズムを取り入れたソフトウェアを、NECのスーパーコンピュータ「SX-Aurora TSUBASA」で動かし、クラウド経由で提供するサービス。2021年9月から提供しており、今回、料金を中心にプランを刷新した。同時にアルゴリズムも改善し、問題の答えを導き出すまでにかかる時間が約30倍に高速化しているという。

 料金体系を刷新した背景について、同社は「従来の技術では解くことが困難である組み合わせ最適化問題に対し、高速で解くことができる量子コンピューティング技術の注目が高まっている。一方、量子コンピューティング技術の導入・活用に当たっては、高額な費用が必要になるという課題があった」(NEC)

 実際、従来のプランでは、スタンダードプランと同じ内容でも月額100万円程度のコストがかかっていたという。そこでプランごとに料金を共通化し、導入を検討しやすくすることで、さらなる利用につなげる狙いだ。

 NECはAIや量子コンピュータ技術を活用し、組み合わせ最適化問題などに取り組む「最適化関連事業」で2025年度までに100億円の売り上げを達成する目標を掲げている。新プランもこの一環として提供するという。

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