一方で、使いにくいと感じる部分もあった。一つは、少なくとも試遊の時点ではPS VR2はPS5との有線接続が必要だったことだ。モーショントラッキング用のカメラ「PlayStation Camera」は不要になったが、それでもケーブルが1本つながっているのは遊びにくい。HDMIケーブルやACケーブルなどが混在して配線が煩雑だった初代よりはマシだが、PCとの無線通信機能「Air Link」を搭載するMeta Quest 2ユーザーの記者からすると抵抗があった。
アイトラッキングなどで歩き回ったり周囲を見回したりするのが楽しくなった分、どうしてもケーブルが邪魔に感じることが多かった。座位で遊んだHorizon Call of the Mountainはそこまでではなかったが、立位で遊んだバイオハザード ヴィレッジは体にケーブルが巻き付きやすく気になった。
もう一つは、コントローラーの握り方に慣れが必要な点だ。オーブ型になって握りやすくなった分、上下左右の正しい向きが分かりにくくなった。さすがに肉眼で見れば分かるが、ヘッドセット装着時など、手元が見えないとき触覚だけを頼りにコントローラーを握るのは難しかった。慣れれば解決するし、シースルービューを使えば問題なく握れるが、最初は戸惑った。
ボタン配置も少し慣れが必要だった。一般的なゲームコントローラーだと、握ったとき指先側にあるのは、上部にボタン(DualSenseなどでいえばR1/L1)、下部にトリガー(R2/L2)という場合が多い。ボタンを人差し指、トリガーを人差し指か中指で押すイメージだ。
ただ、Senseコントローラーはこの配置が逆になっている。上にL2/R2のトリガーがあり、その下のグリップ部分にR1/L1がある。人差し指でトリガーを押し、中指でボタンを押すイメージだ。記者は普段キーボードでゲームを遊ぶのであまり抵抗はなかったが、PlayStationのコントローラーに慣れた人だと戸惑うかもしれない。
最後はアイトラッキングの精度だ。試遊時に眼鏡をつけていたからか、初期設定時や試遊時にアイトラッキングが“気まぐれ”で、視線を検知してもらえないときがあった。
ただ、記者は近眼と乱視がひどく、分厚い眼鏡を掛けているので、その影響かもしれない。実際、裸眼のときはスムーズに視線を検知してもらえた。眼鏡を掛けた状態でも、ヘッドセットをかぶり直すとうまくいったので、センサーとの位置などの問題もあるかもしれない。
ひとしきり遊んだ感想としては「間違いなくゲームを遊ぶのは楽しいし、これまでより豪華に感じるが、有線かぁ……」だった。有線・無線を選択でき、価格が上がりつつもPCがあれば引き続き柔軟な遊び方ができるMeta Quest 2に比べると、よりハイクオリティーな体験はできるが慣れが必要そうな部分も多く、若干融通が利かない印象だ。
今後明らかになる価格にもよるが「有線でもいいからより良い体験がしたい」という人には、ゲーム機として選択肢の一つになるかもしれない。ただ記者は無線で遊ぶことに慣れ切ってしまっているので、やはり有線には抵抗が残った。
とはいえ、日本ではそもそもプレイに必要なPS5がまだ手に入りにくい。半導体不足や転売の問題もあり、PS VR2はあるのにPS5が手に入らない状況や、両方が手に入りにくい状況もあり得る。
ハードウェアがゲームを遊ぶ人の手に渡らなければ、プレイヤーは増えない。プレイヤーが増えなければ、一緒に遊んだり、体験を共有できたりする人が減り、ゲームの魅力が落ちかねない。
一人で遊べるゲームならまだ良いが、VR・メタバース分野は他人との交流などソーシャル要素を強みにするゲームやサービスも多い。特に、すそ野が広いほどさまざまな相手との戦いを楽しめる対戦ゲームには痛手だろう。
いくらゲーム機として優秀でも、そもそもゲームやコンテンツの魅力が弱まっているのでは本末転倒だ。PS VR2が「名ハード」になり得るかどうかは、これから明らかになる価格や発売するゲーム、ハードウェアそのものの販売戦略にも左右されるのではないかと感じた。
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