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AIがおもちゃにも脅威にもなった9月 AIひろゆき、安倍元首相、静岡フェイク、mimic再開方針

» 2022年09月30日 20時30分 公開
[谷井将人ITmedia]

 8月には「Midjourney」や「Stable Diffusion」といった画像生成AIが世間を驚かせた。特にStable Diffusionは、Photoshop用プラグイン(非公式)に組み込まれるなど活用も進んでいる。

 9月は、引き続き画像生成AIが話題に乗り続けたが、それ以上に音声合成AIがバズった。本記事では9月に登場して話題になったAIや、関連するニュースをまとめる。

「AIひろゆき」登場 無料で適当なことを喋らせられる

 音声合成AIを開発するCoeFont(東京都港区)が、匿名掲示板「2ちゃんねる」の開設者として知られる西村博之(ひろゆき)さんの声を再現するAIサービス「おしゃべりひろゆきメーカー」を無料公開した。

photo 「おしゃべりひろゆきメーカー」

「AIひろゆきに適当なことを喋らせよう!」 無料のジェネレーター公開 本人公認

 140文字以内のせりふを入力して合成ボタンを押すと、ひろゆきさんが喋っているかのような動画を出力する。

 TwitterやYouTubeなどの動画投稿サイトでは、同サービスで遊んだ人が動画を公開して楽しんでいる。

「AI安倍晋三」も登場し物議

 「東京大学AI研究会」を名乗る団体が、受け亡くなった安倍晋三元首相の声をAIで再現した動画をYouTubeで公開した。Twitter上では「素晴らしい」や「死者への冒涜では」など賛否の声が上がっている。

photo 動画「[AI]安倍晋三元総理大臣より最後のメッセージ」から引用

「AI安倍晋三」ネットで物議 合成音声のYouTube動画、“東京大学AI研究会”が公開

 同研究会の公式Webサイトからは東京大学電子情報工学科のWebサイトへのリンクが掲載されているが、同学は「当学科の団体ではない」としており、関連性は不明。

静岡水害のフェイク画像が出回る

 静岡県で発生した水害を巡り、画像生成AI「Stable Diffusion」を使って作られたとするフェイク画像がTwitterで出回り、話題になった。画像には上空から俯瞰した視点で建物や土地が水没している様子が描かれている。

静岡県の水害巡りフェイク画像が拡散 画像生成AIを利用 投稿者はデマと認めるも「ざまあw」と開き直り

 投稿者は半日後に謝罪文を公開し、画像がフェイクであると明かした。同件を巡っては、松野博一内閣官房長官が記者の質問に答える形で言及。「流言飛語などによる社会的混乱を防止することは重要と認識している」と説明した。

イラスト生成AI「mimic」が再開方針を公開

 不正利用対策が不十分と指摘され、一時停止中のイラスト生成AIサービス「mimic」について、提供するラディウス・ファイブ(東京都新宿区)がサービス再開に向けた改修方針を発表した。

photo Twitterアカウントを事前審査

停止中のイラスト生成AI「mimic」が10月に再開へ 審査、追跡機能など不正対策を追加

 利用者の審査や生成画像の追跡機能、ユーザーが学習素材としてアップロードした画像を第三者が確認できるよう公開するなどの対策を施し、10月中にβ版2.0を公開する。

手紙を代筆する「手書きくん」

 エスパリアール(東京都渋谷区)が、手紙の作成から送付まで代行するAIサービス「手書きくん」を提供すると発表した。AIが写真からユーザーの手書き文字を学習し、ロボットアームを使って代筆する。

AIとロボットで手紙を“リアル代筆”する「手書きくん」 写真で筆跡を学習 郵送までおまかせ

 同社は「営業用の手書きDMを大量生産などの工数削減に貢献できる」と説明している。価格はB5便箋1枚300円からで代筆から送付作業まで受け付ける。封筒と手紙のセットにも対応する。

AI鬼龍院翔&AIすぅ発表 PCで自由に歌わせられるように

 歌声合成AIを開発するテクノスピーチが、歌声合成ソフト「VoiSona」(Windows/macOS)の正式版をリリースした。同時にゴールデンボンバーの鬼龍院翔さん、Silent Sirenのすぅさんの歌声を学習したAIモデルも年末に販売開始すると発表した。

鬼龍院翔とすぅがAIシンガーに いつでもPCで歌声を再現

 PC上で鬼龍院翔さんなどの歌声を再現して合成し、楽曲制作に利用できる。利用料は月額880円、年額6600円。

 

AI絵画のイラスト集発売

 Stable DiffusionとMidjourneyを使って生成し、イラストレーターがリファインしたイラストを収録した書籍「Artificial Images Midjourney / Stable DiffusionによるAIアートコレクション」(著:852話)をインプレスR&Dが発売した。

日本初、 “AI絵画”だけのイラスト集発売 MidjourneyとStable Diffusionで生成した100枚超

 B5版104ページで、電子書籍版1800円(税別)、印刷版2100円(同)。一部の作品では画像生成に使った指示文も掲載。インプレスR&DによるとAI生成絵画だけでつくったイラスト集は日本初という。

 Midjourneyを巡っては米国時間8月31日に、Midjouneyで生成した画像が米コロラド州で開催されたファインアートコンテストで1位を取ったと報道された。

 絵を提出したのは、米国のボードゲームメーカーであるIncarnate GamesのCEOを務めるジェイソン・アレンさん。アレンさんは「これが物議を醸すことは分かっていた」とMidjouneyのDiscordサーバ上でコメントした。

「DALL・E 2」が順番待ちなしで使えるように

 MidjourneyやStable Diffusionよりも早い時期に発表されたものの、利用するのに順番待ちが必要だった画像生成AI「DALL・E 2」β版が待ち時間なしで利用できるようになった。

AI画家「DALL・E 2」、ウェイティングリスト削除で誰でもすぐ利用可能に

 開発した米OpenAIは「ここ数カ月でコンテンツポリシーに違反するような性的や暴力的なコンテンツの生成を拒否するフィルターを強化し、悪用防止のための技術を構築した」としている。

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