ITmedia NEWS > 社会とIT >
ITmedia AI+ AI活用のいまが分かる

「AI安倍晋三」ネットで物議 合成音声のYouTube動画、“東京大学AI研究会”が公開

» 2022年09月26日 15時00分 公開
[松浦立樹ITmedia]

 「故安倍元総理追悼AIプロジェクト」がネット上で物議を醸している。東京大学の学生有志が立ち上げたという「東京大学AI研究会(東京大学人工知能研究会)」を名乗る団体が9月25日、奈良市で銃撃を受け亡くなった安倍晋三元首相の声を再現した合成音声動画を公開した。Twitter上では「素晴らしい」や「死者への冒涜では」など賛否の声が上がっている。

 同プロジェクトは26日正午時点で6本の動画を公開中。「[AI]安倍晋三元総理大臣から若者の皆さまへ」などのタイトルで、AIを使い作成したという安倍元首相の合成音声が話す様子を披露している。再現しているのは音声のみで、画像は静止画となっている。

動画が取得できませんでした

 同プロジェクトのWebサイトでは「安倍元首相がテロに巻き込まれ、二度とあの声を聞けないのは遺族や同じ志を持つ方、慕っていた国民に大きな喪失感をもたらした」とし、少しでもその慰めになればと、合成音声を公開した経緯を説明している。

プロジェクトのWebサイトから引用

 Twitterアカウント(@AIAbeShinzo)も開設しており、最初に投稿したツイートは26日正午時点で1万件以上リツイートされるなど関心を集めている。ユーザーからは「素晴らしい」や「ありがとう」など絶賛する声の他、「死者への冒涜ではないか」や「AIで美空ひばりの新曲作ったのと同じ感じがして複雑」など疑問を呈する声も見られる。

「東京大学AI研究会」とは何者か?

 発起人である東京大学AI研究会のWebサイトによると、同研究会は東京大学教養学部・工学部有志と学生有志が2021年5月10日に設立。5月時点では「東大13名、京大10名、大阪大学6名、早稲田大学9名、慶応義塾大学1名、筑波大学1名、立命館大学3名」(原文ママ)の43人が在籍し、代表者は東京大学・教養学部・理科一類に所属しているという。

東京大学AI研究会のWebサイトから引用

 目的は「飛躍的・未到達領域のAI開発」としており、最新の活動記録として4月に「SOTA(特定の専門技術領域で最先端レベルを達成していることを指す略語)を大きく上回る自然でクリアなAI音声合成技術の開発(22年8月時点でいまだに記録を上回る研究はない)」と報告している。

 一方、同団体のWebサイトのWhois情報を調べてみたところ、ドメインの作成日を指す「Creation Date」は22年9月22日と表示された。東京大学が公開している届け出のある学生団体の一覧では東京大学人工知能研究会の名前は確認できなかった。

 また、東京大学AI研究会と名乗る同名の団体は25日まで、俳優の浜辺美波さんや歌い手のまふまふさんの合成音声を紹介するWebページを公開していた。同団体との関係性については明らかになっていないが、26日時点ではすでに削除済み。米Internet Archiveのアーカイブ閲覧サービス「Wayback Machine」によると、同サイトは少なくとも9月25日まで存在していたことが確認できた。

 東京大学の広報課に東京大学AI研究会について問い合わせたところ「本学では特に何も把握しておらず、全く関わり合いがない」と話した。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.