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「ウチは中小だから」でクラウド導入を諦めるのがもったいない理由 今から始めるIaaS・PaaS活用キホンのキ(1/2 ページ)

» 2022年10月03日 13時00分 公開
[吉川大貴ITmedia]

 もはやITインフラの構築には欠かせない存在になりつつあるIaaS(Infrastructure as a Service)やPaaS(Platform as a Service)などのクラウドサービス。大企業を中心に利用が増えている一方で、中小企業ではまだ導入が進んでいないのが現状だ。

 調査会社のMM総研によれば、中小企業はそもそもクラウドサービス全体の利用が進んでいないという。3月に発表した調査結果では大企業と中堅企業は8割弱が「クラウドを利用している」と答えたのに対し、中小企業で同様の回答があったのは半数弱だった。

photo MM総研が調査した中小企業のクラウド利用状況

 一方で「中小だからといってIaaS・PaaSを使わないのはもったいない」と、IT分野のコンサルティングなどを手掛けるガートナージャパンのアナリスト・亦賀(またが)忠明さん(ディスティングイッシュトバイス プレジデントアナリスト)は指摘する。亦賀さんによれば、クラウドは中小こそメリットが大きい面もあるという。

 中小企業だからこそ得られるIaaS・PaaS活用の利点とは何か。実際に導入するときの注意点と合わせて、亦賀さんに詳細を聞く。

特集:中小企業のIaaS・PaaS活用

大手企業を中心に活発化するIaaS(Infrastructure as a Service)やPaaS(Platform as a Service)の活用。一方、中堅中小ではまだクラウド自体への理解が進んでおらず、導入に踏み出せていない企業も多い。本特集では、中堅中小企業がIaaS・PaaSを活用する利点を整理し、ビジネスに役立てるヒントを発信する。

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スキル次第で中小でも大企業と同じパワーを クラウドの利点

 亦賀さんによれば、中小企業がIaaS・PaaSを使う利点は、スキルさえあれば大企業と同等のリソースを使える点にあるという。

 そもそもIaaS・PaaSは、米Amazonや米Microsoft、米Googleといった企業が用意したコンピュータ(サーバ)の処理能力を、従量課金制で利用できるサービスのことを指す。PaaSはこれらの処理能力を活用し、ソフトウェアなどを開発する環境やプログラムを実行する環境を提供する。IaaSはこういった環境そのものを一から構築できる基盤を提供している。

 いずれもサービスの提供基盤、もしくは基幹システムの運用基盤などの用途で使われることが多い。このうち、IaaSは物理サーバの性能を貸し出す「レンタルサーバ」「ホスティングサービス」などと混同されることもあるが、これらは異なる特徴を持つ。

 例えばレンタルサーバなどの料金体系は、やりとりできるデータ量などの上限を定めた月額課金制が多い。それ以上の処理はできないので、よりハイスペックなサーバが急に必要になったときは、追加でサービスやプランを契約するといった対応が求められる。しかし追加の契約には時間や手間が掛かることもあり、クラウドに比べると柔軟性に欠けやすい。

 一方でIaaSは従量課金制のサービスがほとんどだ。物理的なサーバ内に仮想的に作った仮想サーバの性能を提供する仕組みで、物理サーバ単位ではなくその中の領域単位で借りるイメージに近い。CPUやメモリといったハードウェアの性能も仮想的に再現するので、サーバごとの処理能力を柔軟に変更しやすい。

 この変更もユーザーの手元ですぐにできるサービスが多いので、知識があれば急なカスタマイズにも柔軟に対応できる。従量制なので、必要なスペックに対して過剰な性能にもなりにくい。

 つまりIaaS・PaaSには、中小が自前で用意できないような性能のサーバでも、事業に合わせた規模で過不足なく使える利点がある。後から規模の拡大・縮小があったときにも対応しやすい。中小に限った話ではないが、小規模なほどこのメリットが大きい。

 定額制ゆえにコストの上限が想定しやすいレンタルサーバなどと比べると、クラウドは従量課金なのでコストの見通しがつきにくいと感じがちかもしれない。しかし裏を返せば、事業規模の大小を問わず過不足ないリソース・コストで目標を実現しやすいわけだ。

 オンプレミスに対するクラウドの立ち位置でも同じことがいえる。「例えばオンプレミスの場合、中小が数千台のサーバを管理するのは難しいかもしれない。調達にも数千万円は掛かる。対してクラウドであれば、少人数でもスキルさえあればビジネス戦略に応じてこれだけのスペックを使いこなせる可能性もある」(亦賀さん)

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