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仮想通貨禁止する政府、位置づけはグレーゾーン<中国NFTマーケット事情・前編>浦上早苗の中国式ニューエコノミー(3/4 ページ)

» 2022年10月13日 07時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]

国営通信社もNFT発行

 大企業のNFT発行として最初に話題になったのは、アリババグループの金融子会社「アントグループ」だ。

 同社は21年6月に世界遺産・莫高窟(ばっこうくつ)の壁画を元にしたNFTを、同遺産を監督する敦煌研究院と共同で発行。10元(約200円)で売り出された8000枚のNFTは、数分で完売した。オンラインゲームやSNSを運営するテンセント(騰訊)、EC大手のJD.com(京東集団)も相次ぎNFTを発行し、いずれも数秒で売り切れた。

 同年12月24日には、国営通信新華社が運営するアプリが21年の注目ニュースをデジタルトークンにしたNFTを11万枚発行。あっという間に品切れとなった。政府と近い新華社がNFTを発行したことで、マーケットでは「政府が推進するのではないか」との観測も浮上し、NFTという概念がIT界隈以外にも広がった。

 ただ、忘れてはならないのは、中国政府がブロックチェーンを次世代技術として推進する一方、仮想通貨の発行や取引を全面禁止しており、中央銀行が発行するデジタル法定通貨(デジタル人民元)以外のデジタル通貨を認めていないことだ。

 この規制は段階的に強化され、21年9月には、仮想通貨と法定通貨の交換や仮想通貨同士の交換だけでなく、情報仲介も禁止され、違反者の刑事責任も追及すると発表された。

 この点は、日本の仮想通貨ユーザーには意外に知られておらず、歩いて仮想通貨を獲得するNFTアプリ「STEPN」が5月に「中国本土ユーザーの規制強化」を発表した際は、大パニックが起きた。

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