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仮想通貨禁止する政府、位置づけはグレーゾーン<中国NFTマーケット事情・前編>浦上早苗の中国式ニューエコノミー(4/4 ページ)

» 2022年10月13日 07時00分 公開
[浦上早苗ITmedia]
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建前は「資産性持たないデジタルアート」

 世界規模で急速に盛り上がり、AIや5Gなどと同様に「次世代技術」的扱いになっているメタバースやNFTだが、中国当局が現時点で明確な方向性を出していないため、企業側は自分たちで考えて線引きをせざるを得ない。

 NFTマーケットを運営したり発行する企業・組織は「海外のNFTとは別物」であることを明確にするため、NFTという言葉を使わず「デジタルコレクション(数字蔵品)」と呼んでいる(本記事では読者への分かりやすさを優先して、中国のデジタルコレクションを「NFT」と記載している)。規制に配慮した結果、中国のNFTはグローバルで流通しているNFTと比較し、以下のような違いが生じている。

  • 中国のNFTは資産性を持たない。発行時に価格はつくが、交換価値を持たない。
  • グローバルではNFTを自由に発行できるのに対し、中国は原則として運営企業の審査が必要。
  • グローバルのNFTマーケットプレイスが誰でも参加できるパブリックチェーンを採用しているのに対し、中国は管理者が存在するコンソーシアムチェーンかプライベートチェーンを採用。異なるチェーン上でNFTを移動できない。

 つまり、中国のNFTは「コレクション目的に用途を限定されたデジタルアート」だというのが規制当局やメガIT企業のスタンスなわけだが、であれば新華社が無料で配ったニュースのNFTがなぜ奪い合いになるのだろうか。

 結局のところ、ユーザーは海外の「NFTが〇億円で売れた」というニュースを見て、それを株式や不動産のような値上がり益を期待できる資産と見ているということだ。特に中国で株価や不動産価格が下落している昨年以降、NFTは新たな投資先を探す投機筋の期待を一身に集めることにもなった。

 政府と協調しながら国内でメタバースやNFTを産業として育て、自社の既存サービスと連携して果実を得たいテンセントのようなメガITにとって、“一儲けしたい”レイヤーの流入は頭の痛い厄介ごとになった。<後編へ続く>

筆者:浦上 早苗

早稲田大学政治経済学部卒。西日本新聞社を経て、中国・大連に国費博士留学および少数民族向けの大学で講師。2016年夏以降東京で、執筆、翻訳、教育などを行う。法政大学MBA兼任講師(コミュニケーション・マネジメント)。帰国して日本語教師と通訳案内士の資格も取得。
最新刊は、「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。twitter:sanadi37

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