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新「iPad Pro」先行レビュー M2の恩恵は処理速度だけではない その“進化ポイント”とは(2/3 ページ)

» 2022年10月24日 23時30分 公開
[村上タクタITmedia]

動画編集にうってつけな「Apple M2」

 実際、Adobe Premiere Rushを使って動画を編集してみたが、動作が引っ掛かることもなくストレスを感じることは全くなかった。MacBook AirのM2モデルでも複数の8K ProRes動画を取り扱うことができるのだから、このiPad Pro M2でも同等の作業が可能だと思われる。筆者が扱う4K動画レベルでは、何本か同時に再生しても何の負荷も掛かっていないかのようだった。

Adobe Premiere Rushを使って動画編集をしてもまったくストレスなく動作する

 去る10月20日には、Blackmagic Designが「DaVinci Resolve」のiPad版の開発を発表した。無料で利用できる「DaVinci Resolve for iPad」と、より多機能で有償版の「DaVinci Resolve Studio for iPad」が2022年の第4四半期に提供予定。しかも、M2だと旧モデルと比べてProResのエンコードが4倍速くなるという。

2022年度中にDaVinci ResolveのiPad版がローンチされるという

 iPadでプロレベルの動画編集アプリが使えるようになるということは、モバイル環境でもプロレベルの編集が可能になるということだ。さらに後述するステージマネージャの外部ディスプレイサポートを活用すれば、必要に応じて大画面で編集できるわけだ。これによって、iPad Proの可能性は大きく広がる。

絵を描く人には最高にありがたい「Apple Pencilによるポイント」

 イラストや絵画、マンガを描く人にとって、一度試せば手放せなくなる機能も新たに追加された。それが「Apple Pencilによるポイント」だ。

 対応したアプリで、Apple Pencilの先端を画面先12mmまで近づけると、Apple Pencilの先端の真下にマークが表示されるようになる。これまでは、ペン先が触れるまで実際に描画される位置は厳密には分からず、精密に点を打つには数え切れないUndo作業が必要だった。これからは一発でペン先を決めることができるのだ。

 プロレベルで絵を描くためにiPad Proを使っている人にとっては、この機能のためだけでも、新しいiPad Proを購入する価値があるといってもいいだろう。

ホバーした状態で、そのままタッチすると描画されるポイントがプレビューされる

 アプリが対応していれば、ペンの色、線の太さなどを反映してマークとして表示する。これらも、従来はちょっと描いてみて、希望する太さや色でなければUndoしてやり直す……ということを繰り返していたものだが、この新しい機能に対応したアプリならば、これからはちょっとペン先を画面に近づけるだけで、どんな線が描かれるのかをプレビューすることができるのだ。

 それはちょうど、パソコンでマウスオーバーした時の感じに近く、プログラム的にもマウスオーバーの表現を加える時のものに近い。

 この革新的な機能は、従来と同じ第2世代のApple Pencilで実現している。また、ディスプレイ側にも新たな仕組みが加えられているわけではない。Apple Pencilのペン先の電磁信号をiPad Proのタッチパネルが感知し、それをM2チップに設けられた新しいコプロセッサーが処理することで検知できるようになったのだ。

 それゆえ、同じディスプレイとApple Pencilを使っていても、従来モデルのiPad Proでこの機能をソフトウェア的なアップデートで有効にすることはできない。逆にM2(もしくは同等の)チップセットが搭載されるようになれば、他のモデルでも「Apple Pencilによるポイント」が利用できるようになるかもしれない。

 薄いガラスとフルラミネーションディスプレイによるペン先と表示面の近さ、ProMotionによるペン先に対する描画レスポンスの速さ、ミニLEDを搭載し、ローカルディミングでコントラストを高めた「Liquid Retina XDR」に、この「Apple Pencilによるポイント」が加わることで、iPad Proはプロレベルで絵を描く人にとって、ますます手放せないアイテムになりそうだ。

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