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クラウド活用を妨げるのは“変化を嫌う文化”? SaaS導入が進まない中小の実態 事例を分析(2/3 ページ)

» 2022年11月01日 11時00分 公開
[伊藤利樹ITmedia]

「自動で機能が更新される」特徴が裏目に SaaSの導入も進まないワケ

 こういったリテラシーの低さもあって、友人の勤め先の社員は「とにかくオペレーションが少しでも変わることをとことん嫌う」という。例えばBI(ビジネスインテリジェンスツールの略、さまざまなデータを分析・見える化するソフトウェア)ツールの導入では苦労したそうだ。

 友人の勤め先にはもともと、帳票形式で店舗ごとの売り上げ情報などを出力するシステムがあった。しかしユーザー部門から自由検索/分析をしたいという要望があり、BIツール導入を決めたという。

 その際、ユーザー部門からは「既存の帳票はそのままの形式で出力して欲しい。レイアウトは当然のこと、配色もそのままで頼む」という要望が出たらしい。「この機に、より良い形式に変えよう」という話は出なかったという。

 友人は「とにかく現場のオペレーションが変わることをとことん嫌う。さすがに配色は変わってもいいのではないか? と思うが、配色も指定された。そもそもITに疎いので、システム変更により操作が変わり分からなくなることが怖いのだろう。システム更改では、現行業務がいかに変わらないか。この点に最も気を使う」と笑っていた。

 自動的に機能が追加され、UIも自動で変わるクラウドサービスとは相性が大分悪そうだ。IaaS・PaaSだけでなく、SaaS導入も難しいというのもうなずける。

 ちなみに、BIツール導入時にレイアウト完全一致の帳票を出したいという要件は大企業でも何度も聞いたことがある。理由はやはり「現状の業務に一切の変更をしたくない」だった。

 印刷された帳票を取り扱うよりも、せっかくBIツールが提供されているのだから、必要なデータを自由に検索できればよいのでは? という意見もあると思うが、ITリテラシーの壁を始めとした障壁があるのだと理解した。

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