先日のチューナーレステレビの記事には、多くの反響をいただいた。テレビ放送が映らないならテレビがなぜ必要とされているのかといえば、テレビ放送を見る以外に大型ディスプレイの用途がそこそこあるというところにみんなが気付き始めたということではないだろうか。
こうした家庭内におけるセカンドディスプレイのポジションは、他にも有力な候補があった。プロジェクターである。昨今ではポータブルタイプの製品も多く登場しており、記事を書けばそこそこビューを取るにもかかわらず、いまだ一部の好事家のものという域からなかなか出られないのはなぜか。
こうした理由を考える素材として、中国XGIMIから「XGIMI Halo+」をお借りすることができた。2021年9月発売で小型ながら900ルーメンの輝度を持ち、価格は10万円を切る。バッテリー内蔵で約2時間駆動と、購入者には満足度が高いのだが、そもそもメーカーも製品もご存じない方も多いだろう。ディスプレイとしてのプロジェクターには、まだキラーソリューションがない。
ホームシアターという文脈では、わりと昔から天井から吊り下げるタイプの大型プロジェクターを導入するマニアもいた。ただ天井に工事が必要なため、持ち家でなければなかなか難しく、プロジェクターは家に映画館のような大スクリーンが欲しいという「お金持ちの道楽」的な要素が強かった。
2000年以降にテレビが薄型化していき、同時に大型化していった時期には、「リアプロジェクション」という手法もあった。これはプロジェクターをスクリーンの後ろから投影するという方式で、大きさ的にはブラウン管テレビのような体積があった。当時の薄型ディスプレイよりは安価であったが、省スペースという方向には合わなかったことから、数年で市場から退場していった。
一方で光源のLED化やDLPのような低価格チップの登場などにより、プロジェクターの小型化が進んだ。メリットは、本体が小型・可搬型でありながら、テンポラリ的に大画面が得られるところにある。これゆえ、データプロジェクターは広く普及した。
筆者は学校に講演に行く機会も多いが、どこにいっても備品としてプロジェクターが1台もないなんてことはまずない。体育館に生徒を集めて、ステージ上のスクリーンに向かって投影するという方式だ。
また、2010年前後に電子黒板の導入が始まったころ、各教室にテレビ型ディスプレイではなく、天井に超短焦点プロジェクターを設置した学校もそこそこあった。センサーと連動し、先生が指したところが反応するなど、電子教材が動かせるものもあった。この分野では、データプロジェクターに強かったエプソンや、学習教材を得意としてきたリコーなどが熱心であった。
ただ今となっては、教室据え置き型はほとんど使われなくなったようだ。年末に保護者が教室の大掃除を行なうPTA活動の際に、脚立に登ってロールスクリーンを掃除したときは、何年分か分からないぐらいのホコリが堆積していた。理科室で実験動画を見せるような、いわゆる「掛け図」の変わりとしては活用されていたが、ある意味それは参観日だけのサービス授業である。昼間、日常的に使うには教室を遮光しなければならないため、使い勝手が悪いのだろう。
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