テレビを囲んで家族団らんの時代が終わったのは、いつ頃だろうか。スマートフォンの普及が2012〜13年ごろであり、NHKの調査によれば、テレビ視聴が初めて短時間化に変容したのが2015年である。もっともこの調査は5年おきにしか行なわれていないので、それよりも早くテレビ離れの傾向はあったかもしれない。
つまりテレビを家族全員で見なくなって、ほぼ10年になろうとしている。個人の時間は最初SNSが侵食したが、SNS疲れの結果、動画コンテンツへの回帰が見られるところだ。パーソナルなスクリーンとしてはスマートフォンが第1位の座を占めるが、SNSならともかく、動画コンテンツを見るには小さい。
ネットコンテンツを大きく見られる表示デバイスとして、ポータブルプロジェクターは有力候補だった。テレワーク化が一気に進んだ2020年後半には、リモート会議用の白い背景布やスタンドが爆安で入手できるようになった。プロジェクター用スクリーンの代わりにできるものが、簡単に手に入る。環境はそろった。
だがテレワークの増加は、昼間も家庭に居る時間を産んだ。つまり可処分時間が夜だけに限らなくなった。そうなると、昼間はよく見えないプロジェクターは弱い。一方テレビならセッティングの手間はないし、昼間でもガンガンな輝度で視聴できる。セカンドスクリーンの座に、タッチの差で中国メーカー製テレビやチューナーレステレビが滑り込んだ、という事ではないのか。
XGIMIでは、11月に開催される「FIFAワールドカップ・カタール大会」に合わせて、プロジェクターでの大画面視聴を訴求する。放送時間も日本時間で早いものは19時、日本の初戦は22時なので、プロジェクター視聴にはちょうどいい。また今回全試合を放送するのはABEMA TVだけなので、テレビじゃなくてもいい。
プロジェクター投影は部屋を暗くする必要があるが、日本の家庭は夜もガンガンに明るいのが好まれる傾向にある。見るのが自分1人なら、家族の理解は得られないかもしれない。それならプロジェクターの置き場所はリビングではなく、自室になる。つまりようやく、ポータブルプロジェクターの出番が回ってきた。
ただプロジェクターの弱点は、この「利用体験が特殊すぎる」というところにある。部屋を暗くして没入感が得られる特別な体験ができるものではあるが、日常的に使うものではない。そこに突破口を見つけようとしたのが「popIn Aladdin」だったわけだが、XGIMIは今後このコンセプトをどう生かすのか。
ポータブルプロジェクターは、買える値段にまで下がっているものの、「あればいいなから「ないとダメだ」にはいまだシフトできていない。家庭内に居座るには、まだ何かのピースが欠けている。
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