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どうなる? イーロン・マスクという“ツイ廃”が導く混沌のTwitter(2/2 ページ)

» 2022年11月14日 16時00分 公開
[西田宗千佳ITmedia]
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「トレンド欄」はどう運営されていたのか

 いわゆる「トレンド」欄も変化した。一部のニュースサイトが表示されづらくなり、同じエンターテインメント系の話題が複数表示されることも増えたように思う。

 この点について、「Twitterが一部のニュースメディアと結託し、世論を誘導しようとしていた操作がなくなった」という人がいる。確かに、表示されるメディアやニュースの傾向は変わったように思えるが、それがなぜなのかは、結局現状では分からない。

 これらの問題は全て、Twitterが内部でどのような基準を使い、どう表示をコントロールしていたかが「分からない」「基準が示されていない」ことによって起きている。

 筆者の私見としては、一部の人が主張するほどTwitterの表示は「変わっていない」ように感じるし、これまでのTwitterが世論誘導をしようとしていた、とは思っていない。

 だが実態として、トレンドとして表示されるニュースは、ニュースを提供するWebメディア側からの売り込みに応じて選択されるものと、話題になっているから表示されるものの両方があり、その双方が混在し、利用する側に区別がつきづらい状態であったのは間違いない。

 レイオフの結果として、人力でキュレーションに対応していた人々は減り、メディアから売り込まれたニュースをキュレーションして反映されることも減った関係上、一部のニュースはより表示されにくくなっている。

「場はメディア」、Twitterにコントロールは不要なのか

 Twitterが不明確な基準で場をコントロールしており、レイオフ後にコントロールが弱くなった結果、Twitterの様子が変わったように見える……ということはあるのだろう。そして、その「基準の不明確さ」に課題があったのは間違いない、と筆者は考えている。 では、本当に今の状態が良いのか? このまま進んでいくのが良いのか? そこも「ノー」であるように思う。

 キュレーションなどで場をコントロールするのは、Twitterに「メディア」としての役割があったからだ。ただそういうと「Twitterはコミュニケーションの場であり、メディアではない」という反論が出てくるだろうとも思う。

 しかしそれは違う。人が集まり、注目を生み出す場であれば、そこは必ず「メディア化」するのだ。2ちゃんねる(現5ちゃんねる)も、mixiも、Facebookも立派なメディアだ。人々の会話は注目を生み出し、注目は必ず人を惹きつける。

 全てをソフトウェアの判断に委ねたとしても、そこに意図が介在しないと考えるのは難しい。ソフトウェアのフィルターでも対話の方向性が生まれることはあり、結果としてそれが「場の色や空気」になってしまう場合はある。

 また、特定の強い思想がある人が参加することで、場に思想性がにじみ、人々を特定の行動へ駆り立ててしまうこともある。2020年のアメリカ大統領選挙に伴う2021年アメリカ合衆国議会議事堂襲撃事件や、コロナ禍での反ワクチン運動などがそれにあたるかもしれない。また、特定の差別につながるような行動も、すべてを利用者の善意に依存していては防げない。そのため現状では、アメリカにしろ日本にしろヨーロッパにしろ、SNSに「場として、メディアとして果たすべき最低限の責任は果たさせるべきでは」という論が強くなっている。

 SNSが必然としてメディア化するのであれば、なにかのコントロールは必ず必要になる。以前のTwitterはそれをやろうとしていた。だが、その基準は場当たり的な建て増しで、外部に明確なルールも示されていなかったので、そこに不満を持つ人は少なからず存在した。

 そしてまさに不満を持ち、お金も持っているツイ廃こそがイーロン・マスク氏だった……ということなのだ。

 冒頭で述べたように、マスク氏が不満をどう解決していくのか、正確なところは分からない。このままコントロールやキュレーションを最低限としてやっていくのかもしれない。

 一見それは自由で良さそうにも見えるが、前述のように、コントロールすべき状況が生まれた時に、どう対応するのだろうか。

 混沌な場を目指すならそれでいいが、混沌に「単価の高い広告」はなかなか馴染まない。必然として、広告での収益拡大は難しくなる。有料サービスの比率を高める、としているのはそのためかもしれない。

 どちらにしろ、やっぱり冒頭で述べたように「分からない」という答えになる。毎日のようにいろいろな方針が語られるので、混沌が落ち着き、新しいTwitterという液体の「色」を判別するには、もう少し時間がかかりそうにも思えるが……。

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