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肩に寄生するヘビ型ロボット 多関節を遠隔から操作 早稲田大などが技術開発Innovative Tech

» 2022年11月16日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 早稲田大学中島達夫研究室、カタールのQatar Universityに所属する研究者らが発表した論文「Piton: Investigating the Controllability of a Wearable Telexistence Robot」は、肩の上で動作するヘビ型ウェアラブルロボットを提案した研究報告だ。肩から出た8自由度のロボットを、遠隔から別のユーザーが視覚と聴覚のフィードバックを受けながら操作を行う。

(a)ロボットの操作を行う遠隔ユーザー、(b)ロボットを装着したユーザー
さまざまな形状に変形し、多様な角度や位置から見たり聞いたりできる

 テレプレゼンスとは、遠隔地から視覚や聴覚、身体などのさまざまなモダリティを通じて、高い臨場感を伝達することを目的とした技術を指す。その多くは、人間そっくりな実装に焦点を当てたロボットを実証しており、人間の頭部に近い位置と回転の動きしか提供できない制限を課題の一つとしていた。

 今回は蛇のような構造を持ち、多関節による高い自由度を有するウェアラブル・テレプレゼンスロボット「Piton」を提案し、この課題に挑戦する。

 ロボットの重量は0.98kg、全長は53cm、バックパックラックなどを含めると総重量約2.54kgとなる。ロボットの構造は、アルミを骨組みに8個のサーボモーターを連結させて8自由度の動きを設計する。先端部にはカメラ2台、スピーカー、マイクなどを装備する。

ロボットの外観

 ロボットは、ユーザーが背負った機械部から肩の上を飛び出るように設置する。遠隔にいるユーザーには、ロボット周辺の音、カメラ2台からの立体映像が提供され、VR HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を通じて、遠隔にいながら現地の視覚・聴覚情報が得られる。

 加えて、肩から出る先端部は遠隔ユーザーによって操作が行える。人と違って蛇のような長い形状なため、首の動きとその下の胴体の動きに分けられた操作方法を採用した。

ロボットを装着した正面と横からの画像

 3つの手法で制御方法をテストした。(1)HMDだけを用いてロボットの位置と姿勢を制御する方法、(2)HMDを用いて回転を制御し、手持ちのトラッカーを用いてロボットの位置を制御する方法、(3)HMDを用いて回転を制御し、足に装着したトラッカーを用いてロボットの位置を制御する方法である。

(a)HMDだけでロボットの位置と姿勢を制御する、(b)HMDで頭部の動き、手に持ったトラッカーで胴体を操作する、(c)HMDで頭部の動き、足に付けたトラッカーで胴体を操作する

 提案した制御方式のテレプレゼンスへの適用性を検討するため、身体所有感や知覚精度、乗り物酔いなどに着目したユーザー調査を行い、ユーザーの印象を測定するためのアンケートを実施した。その結果、(1)と(2)が身体所有効果と知覚精度が高く、参加者から高い支持を得た。

Source and Image Credits: Iskandar, A.; Al-Sada, M.; Miyake, T.; Saraiji, Y.; Halabi, O.; Nakajima, T. Piton: Investigating the Controllability of a Wearable Telexistence Robot. Sensors 2022, 22, 8574. https://doi.org/10.3390/s22218574



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