ITmedia NEWS >
SaaS セレクト with ITreview

いまだ「紙とExcel」な奨学金にDXを ベンチャー企業「ガクシー」が目指す「あきらめなくていい社会」(2/4 ページ)

» 2022年11月17日 17時00分 公開
[岡田有花ITmedia]

 同社が運営する「ガクシー」は、1万6000件もの奨学金を網羅し、種類やキーワードで検索できる。20年にβ版、21年に正式版を公開。ユーザーは12万人と日本最大規模だ。

画像 ガクシー

 同時に、奨学金を提供する財団や篤志家が、募集から学生管理までワンストップでできるプラットフォーム「ガクシーAgent」も提供している。

 探しやすく管理しやすいシステムを作ることで、奨学金の出し手・受け手が増え、学生がお金を理由に「あきらめなくていい社会」につながる。そんな未来が松原さんの希望だ。

「存在するのに使われない」奨学金もある

 奨学金のニーズは確実に高まっているのだが、「存在するのに使われていない」奨学金も全体の1割ほどはあるという。マッチングがうまくいっていないのだ。

 財団などは、提供する奨学金を対象の学生に告知したいのだが、自前のWebサイトに掲載したり、大学に案内を出したりするぐらいしか手段がない。

 大学は、学生に対して、最大手である学生支援機構(JASSO)の奨学金を案内することが多いという。他の財団や篤志家などによる奨学金も多数あるが、掲示板に載せるぐらいで手一杯。学生が個々の情報にアクセスしきれず、条件の良い奨学金を見落としてしまう。

 その結果、給付型(返済不要)の奨学金を借りられたかもしれない学生が貸与型(返済が必要)に流れ、卒業後に返済に悩むことにもつながっている。

1万6000もの奨学金情報、クロールと「人力」でひたすら収集

 ガクシーはそんなミスマッチの解消を目指している。日本最大級・1万6000件もの奨学金を技術と人力で収集。条件が良い奨学金を、学生が自ら検索することができる。

 膨大な奨学金データの3分の2はネット上を機械的にクロールし、残りは人が「ひたすらネットを見て」検索。ネットの奥深くから情報を掘り出している。「奨学金情報の2〜3割はネットにも載っていない」とみており、カバー率を高めていきたいという。

 検索システムも試行錯誤している。奨学金の受給条件は専攻や所得、成績などまちまちで、一元的な検索は難しい。「学生が自分の基本情報を入れた瞬間、対象の奨学金が出てきてすぐに申し込めるのが究極のゴール。これに近づけていきたい」と、松原さんは意気込む。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.