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食品に金箔を貼って回路化、食べると電気で“塩味増強” お茶大などが技術開発Innovative Tech

» 2022年11月21日 08時00分 公開
[山下裕毅ITmedia]

Innovative Tech:

このコーナーでは、テクノロジーの最新研究を紹介するWebメディア「Seamless」を主宰する山下裕毅氏が執筆。新規性の高い科学論文を山下氏がピックアップし、解説する。

 お茶の水女子大学、東京大学、ヤフー株式会社、東京工科大学に所属する研究者らが発表した論文「FoodSkin:金箔(きんぱく)回路を用いて電気味覚を実現する食品拡張手法の提案」は、食品表面に金箔を貼ることで回路の一部とし、食べた際に電気刺激により味が変わる技術を提案した研究報告だ。チョコレートやクッキーに金箔を貼って実験した結果、電気味覚が生起され塩味などが増強したという感想が得られた。

金箔を接着させたクッキーやチョコレート

 電気味覚とは、味覚の神経系への電気刺激によって味を生起、抑制、増強する技術を指す。これまでの電気味覚の研究では、フォークや箸、コップ、おわんなどの食器型装置や手袋型装置など、装置を介して食べた食品に電気味覚を付加するアプローチや、顎や首に電極を貼り付け、口腔内の飲食物に電気味覚を付加するアプローチが提案されてきた。電気味覚に関する研究をより知りたい方はこちらを参照されたい。

 しかし、既存の研究で電気味覚を提示できる食品は水分量が多く電気を流すことのできるものに限定されており、水分含有量が少ない固形の食品への適用は困難であった。今回は、水分含有量が少ない固形の表面に金箔の回路を作成して、電流を印加することで電気味覚を生起させる食体験拡張技術を提案した。

 食品の表面には、接着層(水に少量の片栗粉を添加し、加熱してのり化させたもの)を刷毛で塗布し、その上に金箔を重ねる。金箔を任意の形状に加工する方法は、食品に貼り付ける前にオブラートで補強してカットするか、ステンシルの型紙を敷き、その上から金箔を貼る方法のどちらかで行う。

オブラートを用いた加工方法
ステンシルの型紙を用いた加工方法

 電気刺激を提示するシステムは、電源部分、指先部分(導電性繊維の指サック)、手首部分(EMS用粘着パッド)で構成する。食品表面の金箔回路の一端にデバイスの指先部分で触れつつ、金箔回路の他端が舌に接触するよう食品を摂取することで、下図に示すような人体を経由した回路が形成され舌に電気刺激を提示する仕組みである。

指サック型デバイスおよび回路図

 これによって金箔付き食品を食べた際に電気刺激が付与されるが、実際に電気味覚が生起するかを調査した。食品を摂取する際は、指サックと舌の両方が金箔に触れている状態で電流を印加する。対象食品には水分含有量が低い食品であるチョコレートとクッキーを用いた。

 結果、論文著者の主観評価では、次のような感想が得られた。

 「陽極刺激の場合、舌の金箔が触れている部分に塩味が増強されたような味やビリビリとした刺激を感じた。また陰極刺激の場合には、舌の箔が触れている部分では主に塩味がまろやかに感じられたり、弱い金属味が感じられたりした。陰極刺激と比べて陽極刺激の方が通電時の味質変化が大きく感じられた」

出典および画像クレジット: 元村 愛美, 中村 裕美, 池松 香, 五十嵐 悠紀, 加藤 邦拓. FoodSkin: 金箔回路を用いて電気味覚を実現する食品拡張手法の提案. 情報処理学会研究報告ヒューマンコンピュータインタラクション(HCI), 2022-HCI-200 (21), pp.1-6, 2022.



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