In Rhythm With Natureは起動する時刻によって13種類ある植物のどれかを表示する。違う植物が良ければ、画面下部の左右にあるボタンをクリックすれば植物を切り替えられる。とはいえ、思いがけない美しい花と偶然出会う楽しみを受け入れるのも一興だ。
植物が表示されると、ゆったりとした音楽や鳥のさえずり、風の音が聞こえる。そして花が揺れ、チョウやハチが舞い、カタツムリが這う様子を見られる。暖かい日差しが注ぐどこかの草原で、寝転んで花を眺めている気分だ。この映像を見るだけで、気持ちが落ち着いてくる。
この画面は、植物を眺める以外のこともできる。PCのマウスを花や葉の上へ動かすと、弱々しく揺れるのだ。本物の草花に優しく触れるようで、いつまでも飽きない。
それでは、自然と自分のリズムを同期させていこう。画面下部の中央にある、座禅を組んでいるようなボタンをクリックすると花が拡大される。そして花が開くときに「Breathe in」(息を吸って)、閉じるときに「Breathe out」(息を吐いて)と表示されるので、そのタイミングに合わせてゆっくり呼吸しよう。
呼吸の指示は数回繰り返されると表示されなくなる。その後は花が開いては閉じ、閉じては開くだけ。それに合わせ、落ち着いて呼吸を繰り返せばいい。目は花に、耳は流れる音に集中して呼吸していけば、次第に穏やかな気持ちになるはずだ。
仕事の合間に使えば途切れた集中力を復活できそうだ。夜寝る前に神経を静めて寝付きを良くするといった使い方も有効かもしれない。作業中、デュアルモニターにIn Rhythm With Natureを写しておくだけでもリラックスできそうだ。
In Rhythm With NatureはExperiments with Googleの中でも新しいコンテンツで、2022年に公開された。メンタルヘルスに対する意識向上などが目的の「世界メンタルヘルスデー」(毎年10月10日)に合わせ、デジタル技術をメンタルヘルス改善に役立てようと公開に至ったものだ。
自然と縁遠い生活をしている現代人だが、やはり人間は自然に触れることが欠かせないらしい。その効果は大きく、豊かな自然に囲まれていると気分が良くなり、心配事が減り、活動的になり、対人関係も改善するという。しかもその効果は本物の自然でなく、同Labによると風景のビデオを見たり、仮想現実(VR)空間に入ったりしても得られるそうだ。
開発したGoogle Wellbeing Labは、その効果を手軽にWebアプリで得られるようにIn Rhythm With Natureを作った。GoogleといえばICT時代を代表する企業であり、テクノロジーの使用を控えるよう呼びかけることは意外に思える。
しかし実際にはウェルビーイングにつながる機能をスマートフォンやスマートウォッチに搭載するなど、積極的にデジタルウェルビーングやデジタルデトックスに取り組んでいる。スマートフォンやSNSへの過剰な依存は間違いなく不健康だ。健康的な生活を送るには、技術とほどほどの距離感を保って適切に使うのが良いだろう。
Experiments with Googleにも、ウェルビーイングをテーマにしたコンテンツがいくつかある。Googleがこうしたデジタルデトックスに取り組むことは、逆説的で興味深い。機会を見つけて、近いうちに本連載でも紹介したい。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.
Special
PR