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「Twitterはオワコン、移行先はmixi」という世界線はありうるのか小寺信良のIT大作戦(2/2 ページ)

» 2022年11月25日 18時00分 公開
[小寺信良ITmedia]
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SNS安定期における「移行」の姿

 日本人のネットリテラシーを大幅に変えたのは、2011年の東日本大震災であった。それまでもYouTubeやニコニコ動画といったメディア型のコミュニティは存在していたが、編集しない「ダダ漏れ」に代表されるライブストリーミングメディアが2010年頃から人気となった。そこに東日本大震災である。ライブストリーミングメディアは、テレビや行政を信用しない人達のメディアとして成長していった。

 このときに培われた動画に対する知識は、のちにコロナ禍になった際のZoom等のリモート会議に生かされることとなった。「FaceTime」でさえ普及しなかった顔出しNG文化圏の中にありながら、有事になりスマートに顔出し会議へと移行できたのは、当時の技術的、メンタル的なリテラシーも大きかったはずだ。

 Twitterからの避難先を考えるなら、オープン型でそこそこ人がおり、「荒れ」が少ないということでは、Instagramは有力ではある。Instagramは写真ベースからスタートし、「映え」を追求したことから、多くのインフルエンサーを誕生させた。文章は不要、印象だけで「もっていく」ことができ、もっとも商業・広告ベースに載せやすいプラットフォームであった。こうしたメディア型コミュニケーションは、配信者・投稿者と視聴者に別れるため、構造的に対等にならないという特徴がある。これはTwitterの構造にも似ている。

 だが決定的に違うのは、Twitterは現在でこそ写真や動画も載せられるが、基本的には「文章書き」が集うプラットフォームだと思っている。避難先としてInstagramが上がってこないのは、やはり多くの人が「筋が違う」と思っているからだろう。

 小規模なグループ型としてLINEやSlackもあるが、大規模対応や、テーマのないスレッドの乱立構造にはなりにくい。DiscordもAIブームに乗って注目されているところではあるが、個人的にはまだどこにどう分類すべきものなのか、腹が決まっていない。

 素直に移行先を検討するなら、「Mastodon」がほぼTwitterと同じような機能を有しており、最有力と考えられている。MastodonはTwitterと似て非なるものとして2017年頃から話題になり始め、ITmediaでもかなり長期に渡って連載が続いていた。つまり2017年頃からすでに、「Twitterもうダメだ」という話はあったのである。

 筆者も数年ぶりにMastodonを覗いてみようと思い立ったが、そもそもどのサーバでアカウントを作ったか全く覚えておらず、ブックマークもしていなかったので、アカウントを作った時のメールを検索してようやくたどり着いた。

 だがTwitterで知っている人のアカウントを見つけることが難しい。ようやく5人ぐらい見つけたが、アクティブなのは1人しかおらず、筆者のホームは友人が1人ぼっちで空虚に向かって荒れ狂う、地獄みたいな空間になっていた。

ひとりで大暴れ的空間

 2010年ぐらいまでは、ガラケーからスマホへのシフトなどもあったことから、我々はそこそこな頻度でSNSサービスを乗り換えるみたいなことをやってきた。だがそれ以降は安定期に入ったので、イチから友人のアカウントを探して人間関係を作り直す経験を、もう10年以上やっていない。

 我々は、この手間に耐えられるのか。

 LINEは、ユーザーに電話帳をアップさせて、互いに番号を知っている者同士なら友だちにしてしまうというやり方で、この手間をクリアした。この方法は当時から批判もあり、加えて友だち削除機能がなかったことから、地獄になるケースも見られた。だがこれはまだ電話番号が機能していた時代の産物で、また使われ方も家族や身内の連絡という想定だった。もうこの手は使えない。

 Twitterの人間関係は非常にゆるい繋がりで成り立っており、Mastodon移行に立ちはだかる問題は、その関係性ごと引っ越せるのか、というところだろう。Twitterと同じアカウント名が使えればいいが、そうでなければ探すのは大変だ。

 では昔の友人関係が残っているmixiに戻るという世界線は、あるのか。

 mixiは「趣味でつながるSNS」とアピールしているように、現在は個人日記よりもコミュニティを中心としたSNSとなっている。だが現在mixiの収益の柱はモバイルゲームであり、もう実態はSNSではなく、ゲームプラットフォームである。ゲーム会員は2800万人越えだが、SNSの利用者数はもはや公開もされておらず、規模も不明だ。

 Facebookの隆盛から推測すると、mixiの全盛期は2008年ごろ、衰退期は2010年〜2012年ごろではないかと思われる。移行すれば10年以上前の自分の日記と対面することになり、おそらく友人達もその日記を読むことになる。むしろ移行する気配が見えたなら、まずはその黒歴史を抹殺するアクションをとるべきだろう。

 ちなみに筆者は、2018年にmixiへの不正ログインが発生したため、このまま放置して誰かに迷惑がかかることを懸念して、mixiを退会している。どのみち友人関係は再構築しなければならないのは確定なので、このままTwitterがどうなるのか、見届けてから考えたいと思っている。

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