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機能表よりも世界観のほうが大切だ マネーフォワード クラウド会計 vs. freee会計(後編)クラウド会計SaaS対決(1/5 ページ)

» 2022年11月28日 16時19分 公開
[武内俊介ITmedia]

 前編では、バックオフィス業務を支援するSaaSが数多く登場していること。そして、そこから自社で使うSaaSを選択する際には、機能のマルバツではなく設計思想にフォーカスすべきだと書いた。またマネーフォワード クラウド会計(MFクラウド)の特徴と、その設計思想をお伝えした。後編では、競合にあたるfreee会計についての紹介と、MFクラウドとの対決結果をお伝えする。

 freee社は、Googleを経て起業したCEOの佐々木大輔氏が設立した。「スモールビジネスに携わるすべての人が創造的な活動にフォーカスできるよう」をミッションに掲げ、「既存の会計ソフトは分かりにくすぎる」「もっとスモールビジネスの人たちでも活用できるものを作りたい」という想いから構築されたプロダクトがfreeeである。

 既存の会計ソフトに、クラウドやアカウントアグリゲーションを掛け合わせたMFクラウドとは異なり、「スモールビジネスにとっての会計ソフトはどうあるべきか」という本質的な問いから出発している。

 会計ソフトはここ数十年あまり進化してこなかった。法令対応や細かな改善点などは都度行われていたが、多くの専門家が慣れ親しんだ会計ソフトの仕組みを根本的に変えようという発想にならなかったからである。ヘンリー・フォードの有名な言葉で「もし顧客に、彼らの望むものを聞いていたら、彼らは『もっと速い馬が欲しい』と答えていただろう」というものがあるが、既存の延長線上では新しいプロダクトは生まれない。

 もちろん常に変えることが正解であるとは限らない。しかしNokiaやソニーからはiPhoneが生まれなかったように、既存の枠組みの中にいる人間には見えていない改善点というものがある。それこそがイノベーションの種であり、起業家が取り組むべき領域でもある。会計ソフトという古くて専門的な領域に、freeeがゼロベースで「理想のソフトウェア」を構築しようとしたことは称賛されるべきことだ。

 一方で、会計の専門家の中にはfreeeを毛嫌いする人間も少なくない。既存の会計ソフトの枠組みに捉われずにゼロベースで開発されたため、初期は会計ソフトとしてのあるべき機能が足りなかったり、仕訳がプレビューできなかったり、と専門家からは散々の評価だった。

 一方で、既存の会計ソフトに対して不満を持っていた人々、特に会計知識を持たないスモールビジネスの方々からは一定の支持を得て、少しずつユーザーを拡大してきた。今では会計ソフトとしての基本的な機能は備えているが、当初のイメージも影響してか、会計の専門家の中には一定数のアンチfreee勢がいることも事実である。

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