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「EVって実はエコじゃないんじゃない?」 テスラにまつわる疑問にオーナーが答えてみた走るガジェット「Tesla」に乗ってます(2/4 ページ)

» 2022年12月02日 12時00分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]

ESG視点で書かれた「インパクトレポート」を読んで!

 ライフサイクルアセスメント(LCA)という視点から、製造時の温室効果ガスの排出量やバッテリーの廃棄処理の問題を声高に論じる向きもあります。Teslaがどのような姿勢でこの課題に取り組んでいるのかは「インパクトレポート」(PDF)で詳細に語られています。この分野の専門家ではない筆者には、難しく読み解けない部分もありますが、Teslaの存在に対し「サスティナブルではない」と否定的な意見をお持ちの方は、一読をお勧めします。ぜひ、その上で可否を判断してください。

photo Teslaのインパクトレポート2021年版の表紙。ガバナンス、ダイバシティ&インクルージョン、環境、製品などについての百数十ページの報告書

 インパクトレポートに、どのようなことが書かれているのか一部事例をあげましょう。Model 3およびModel Yの製造プロセスでは、同等の内燃機関車両に比べて温室効果ガス排出量が多くなっているそうです。しかし、6500マイル(1万460km)走行した時点で、同等の内燃機関のクルマよりもライフサイクル全体の排出量が少なくなる、とあります。

 筆者の場合、現在、走行距離1万1000kmなので、現車を乗り続ける限り、エネルギー面においては、サスティナブルなクルマ生活を送ることができるということなのでしょう。

 LCAについても言及しています。それによると、サプライチェーン排出量を計るスコープ1、2における温室効果ガス削減の取り組みについて、しっかりと数値を示して記述されています。加えて、スコープ3の排出量測定も開始しているとも記載されています。Teslaの場合、ユーザーの手に渡ったクルマの走行データに直接アクセスできるので、他のメーカーよりも相対的に正確な排出量を算出可能だと結ばれています。

 スコープ1、2、3の意味については、環境省と経産省の「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」をご参照ください。インパクトレポートには、バッテリーの製造・廃棄・リサイクルにまつわるさまざまな課題についても、Teslaの取り組みや考え方が示されています。

photo サプライチェーン排出量計測では、サプライチェーンの上流と下流、ならびに自社の温室効果ガス排出量を算定する際の考え方が定められている

 こういった話をしても「企業の報告書なんて鉛筆をなめながら都合良く書ける」と言う向きもあるかもしれません。つまり、インパクトレポートの内容の信ぴょう性に疑問を呈する意見です。

 ただ、考えてみましょう。現在は、企業の社会的責任が問われる時代です。株式を公開している企業であれば、株主や投資家に対し、非財務情報(ESG関連の取り組み)を開示することで、高い評価を得る努力をすることが当然となりつつあります。

 世の中には会計処理を粉飾する企業もあるくらいなので「鉛筆なめなめ」が絶対ないとはいえません。ただ、それが表面化した場合の信用失墜といった負の側面を考慮すると、あまりにリスキーな行為に映ります。筆者としては「ない」と信じています。

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