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「EVって実はエコじゃないんじゃない?」 テスラにまつわる疑問にオーナーが答えてみた走るガジェット「Tesla」に乗ってます(4/4 ページ)

» 2022年12月02日 12時00分 公開
[山崎潤一郎ITmedia]
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タッチスクリーンによる操作はダメなのか?

 Model 3の各種操作や設定のほとんどは、15型のスクリーンに表示される仮想ボタンやスイッチで行います。Teslaを批判する意見の中に、このスクリーン操作の不便さや危険性について言及したものも散見されます。

 確かに走行中に何らかの操作が必要になった場合、スクリーンに視線を移す行為は、危険を伴う場合もあります。例えば、フロントガラスが曇り始め視界が失われそうになった場合、物理スイッチであれば、目をやらなくてもデフロスターをオンにすることができるでしょう。スクリーン操作に懐疑的な見方をする人々は、そのあたりのことが念頭にあるのでしょう。

 しかし、Teslaには「音声コマンド」という物理ボタンよりも強力な武器があるのをご存じでしょうか。走行中であっても声で操作できるわけですから、手元でボタンをまさぐるよりも安全です。そして、Teslaの音声認識は極めて優秀です。滑舌の悪い筆者の発話もちゃんと認識してくれます。

photo ハンドル右のボタンを押すと音声コマンドのモードが起動する

 走行中に必要となる操作はどのようなものがあるでしょうか。筆者の場合、次のような操作を音声で行います。前述のデフロスター、エアコンの温度や風量、ワイパーのオン・オフや速度、ナビの目的地設定、ナビ地図の拡大縮小などです。取説を見ると他にもいろいろと可能ですが、走行中に必要な操作は、おおむねそんな感じではないでしょうか。全て音声で操作可能です。

photo 「デフロスターをマックス」というとファンのごう音とともにガラスの曇りが取れる。温度表示の下のデフロスターアイコンがオレンジに点灯している

 音声コマンドというと、決められた言葉以外は受け付けないようなイメージですが、変則的な言い方をしても認識してくれます。例えば、エアコンの温度調節に関して、取説には「温度を下(上)げて」とありますが、「暑い(寒い)!」と一言いえば、設定温度が1.5度上下します。ナビ地図の拡大も「拡大!」と一言でOKです。このワザは、結構重宝します。

photo 地図の拡大や縮小も「拡大(縮小)」と発するだけで実行してくれる

 物理スイッチでは、音声による操作は不可能です。Teslaに批判的なある高名な自動車評論家がTeslaのスクリーン操作について、次のように言及しているのを読んだ記憶があります。その人は、日本の自動車メーカーが安全に配慮して物理スイッチを大切にしている点を称賛し、そこに部品を付けただけではなく、裏側に配線を引っ張るなどして、あえてコストをかけていることを力説していました。

 しかし、コストの話をするのであれば、Teslaの仮想スイッチもプログラミングのコストがかかっていることをお忘れでしょうか。しかも、アップデートで機能を追加したりブラッシュアップをくり返すわけですから、継続的にコストをかけ続けているわけです。組み立てて、はい終わりというわけにはいきません。

photo 「ワイパーをはやく」と発するとワイパーの速度が1段階速くなる。アイコンがちゃんとワイパーになっている

 ちなみに、「スクリーンがフリーズしてブラックアウトしたらどうするのだ」という意見もあるでしょう。その場合は、速やかに路肩に停止してスクリーンの再起動を行うといった方法で対処できます。Teslaはスクリーンが故障しても、走る、曲がる、停まるといったクルマの基本動作には影響しません。インフォテインメント系と走行系はシステム的に切り離されているそうです。

 余談ですが、この物理ボタン論争は、2009年にiPhone 3GSが登場したときのことを思い出します。当時、携帯電話ビジネスの在り方に関する書籍を上梓した縁で、幾度かセミナーに登壇する機会を得た時期がありました。発売されたばかりのiPhone 3GSについて話し終えた際、NTTドコモのそれなりの役職の方と名刺交換をしました。

 iPhone 3GSを触りたいということで手渡すと、仮想のテンキーを触った後に、「はは〜ん。こりゃだめだ」といった、あからさまな態度と表情をしていたのを今でも鮮明に覚えています。その人からすると、まさか世の中の携帯電話のほとんどが、仮想キーボードになるなど思いもよらなかったでしょう。

 先日発表された、メルセデス・ベンツの新型EVも見事なまでに巨大なタッチパネル操作が中心になっています。クルマの操作系において、物理スイッチがなくなるとは思いませんが、今後、仮想スイッチの領域が拡大していくものと思われます。

著者プロフィール

山崎潤一郎

音楽制作業の傍らライターとしても活動。クラシックジャンルを中心に、多数のアルバム制作に携わる。Pure Sound Dogレコード主宰。ライターとしては、講談社、KADOKAWA、ソフトバンククリエイティブなどから多数の著書を上梓している。また、鍵盤楽器アプリ「Super Manetron」「Pocket Organ C3B3」「Alina String Ensemble」などの開発者。音楽趣味はプログレ。Twitter ID: @yamasakiTesla


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