マネフォがDB統合の方針転換、freeeは機能を個別提供へ インボイス制度が契機に
2023年10月に始まるインボイス制度を見据え、バックオフィスSaaSの各ベンダーはこれを好機と、機能拡充を進めている。クラウドERPを提供するマネーフォワードもその1社だ。同社は、顧客体験の改善に向けてサービスの裏側の構造を大きく変える計画を進めている。
同社のサービスの特徴は「会計」「経費精算」といったそれぞれのシステムが独立して動作する、コンポーネント型の構造を採っていることだ。これにより、企業は自社に必要な機能だけを導入しやすくなる。中堅以上の規模の企業が導入する際に有利な構造だ。
一方で各コンポーネントが、取引先の情報などを記録したマスターDBを個別に持っていることが、ネックになりつつあった。契機となったのはインボイス制度だ。インボイス制度では、取引先が適格請求書発行事業者かどうかで処理の方法を変える必要がある。
「現在、取引先マスターが各プロダクトに分かれているため、『それぞれごとに適格請求書発行事業者かどうか確認が必要なのか』と問い合わせを頂くことが増えた。このタイミングで、取引先マスターを統合するプロジェクトを走らせていく」と、マネーフォワードの法人向けプロダクトを管轄するビジネスカンパニーCSOの山田一也氏は言う。
2023年の夏から順次、統合を進める。取引先マスター以外にも、従業員マスターや、ワークフローのマスターも順次統合していく。各マスターが1つになれば、従来のAPIを通じた連携に比べても管理がしやすくなることが見込まれる。今回のマスター統合により「コンポーネント型ERPの唯一の弱点」(山田氏)が解消されることになる。
マスターの統合プロジェクトは1年くらいかけて進めてきており、当初はこれまでのDBと並行稼働させる。どこかのタイミングで一本化していく計画だ。
統合型マスターの利点を生かした最初のシステムが、23年2月に提供を開始する「マネーフォワード クラウド個別原価」だ。プロジェクトの工数管理から、個別原価計算まで行うサービスだが、こちらは共通のプロジェクトマスターDBを参照する仕組みだ。「マネーフォワード クラウド会計Plusのプロジェクトマスターと共通のDBを参照している。会計上でこの費用がどれにあたるかをすぐに確認できる」(山田氏)
統合型のfreeeは、個別機能の括りだしを進める
競合SaaSであるfreeeは、当初から各機能のモジュールが1つのDBにアクセスする統合型の仕組みを採用している。「取引を行う部分と財務会計がいっしょになって、インボイスの管理がやりやすい」(freeeの佐々木大輔CEO)とアピールしていた。
一方で、機能ごとに切り出しての提供も進めている。すべてをfreeeで統一してもらうことが生産性向上につながるというスタンスは崩していないが、「freee勤怠」と「freee経費」については個別での提供を始めたほか、会計機能だけを除いてERPを提供する「freee経理」も8月にラインアップした。
中堅以上の規模の企業で導入が増加しており、「すべてをfreeeに置き換えるのは、心理的、合意形成のハードルが高い。まずは経費精算から導入してもらい、会計につなげる」(freee)という狙いだ。
コンポーネント型ERPのマネーフォワードがDBを統合していく一方、統合型ERPを特徴としてきたfreeeは、個別機能の切り出しを進める。クラウドERPの雄である2社の方向性が、次第に近づいてきたともいえそうだ。
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