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スマホ高騰 これから日本は「修理して長く使う」が主流になる?小寺信良のIT大作戦(3/3 ページ)

» 2022年12月10日 11時30分 公開
[小寺信良ITmedia]
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修理して長く使うという選択肢

 実際、スマートフォンの耐用年数は何年と考えるべきだろうか。パソコンでは、10万円を超えて減価償却となる場合、法定耐用年数表では4年と決められている。一方スマートフォンは税法上とくに決められているわけではないが、パソコンのような電子計算機であると考えれば4年、電話設備その他の通信機器と考えれば10年という事になる。製品寿命として考えれば、4年が妥当なところであろう。

 一方GoogleのPixelシリーズにおけるセキュリティアップデート保証を1つの期限として考えれば、耐用年数は5年という事になる。使用するアプリのアップデートの射程範囲ということを考えても、4〜5年は妥当なところかもしれない。

 これまで我々はケータイ時代からの習慣として、新機種がでるたび毎年買い換えていたり、キャリアの2年縛りで購入してきた。だがすでにキャリアから買うという必然性もなくなり、ましてや並モデルでも10万円超えれば減価償却の対象になる事から考えれば、今後は2倍以上の期間使う人が増えてくるだろう。

 こうした動きに備えて、すでに修理業務を行なう事業者は、修理の需要増加に備え始めている。NTTドコモでは、従来預かり修理で2週間程度要していたところを、店舗に修理スタッフを常駐させることで、最短60分に短縮するという。最初はGalaxyのみだが、これは修理パーツの供給ルートが確保できたからで、他の機種も順次始まっていくだろう。家電量販店でも、スマホの修理受付を上階から1階へ移す、受付時間を延長するなどの動きも見られるところだ。

ドコモはショップでの短時間修理サービスを展開へ

 一番大きなポイントは、日本はもはや十数万円の機器を毎年や2年ごとに買い換えられるほど、裕福な国ではくなったということである。スマホを買うときは、修理を前提で延長保証や修理保険に加入するというのが当たり前になってくるだろう。

 加えてスマートフォンの進化も、2年程度ではたいして違わなくなってきている。筆者も今年Pixel 4aからPixel 6aに買い換えたが、それは下取り価格がなかなか良かったからであり、Pixel 4aが遅くてどうにもならなかったかというと、そういうわけでもない。カメラもこれ以上高画素になったらファイルが重たくなって、内部ストレージやクラウドバックアップ領域を圧迫することになり、メリットがない。ネット上で拡散される画像として、どのみちハンドリングのよい画素数にシュリンクされるだけだ。

 搭載カメラ数も、結局はズームレンズがないことから、画角違いのカメラを複数搭載しているだけの事である。広角方向はもう一段落して、あとは望遠がどれだけ必要かという事になっている。実際ワイド方向は歪みの関係から必然的に限度があるが、望遠側はいわばキリがない。そんなに望遠が必要ならば、ちゃんとしたカメラを使うべきだろう。

 サイズ感、持ちやすさなどの評価軸もあるが、所詮は平たい板である。画面が折りたためることも1つのトレンドとなりそうだが、スマホがここまで丈夫になったのは、稼働部がほとんどないからである。稼働部が増えれば、堅牢性は下がる。したがって耐用年数も下がる。

 また新しい付加価値も生まれてくるのかもしれないが、今のスマホは、これはこれである意味完成してしまったとも言えるのではないか。電車通勤がなくなった昨今、使用スマホを人に見られる機会もめっきり減った。日本における「修理する自由」は、マインド的には「長く使う自由」に転嫁されていくのかもしれない。

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