コトブキタウンスケープサービスがクラウドで開発したシステムは大きく分けて2つ。1つ目は現場の撮影作業を効率化する仕組みだ。タブレット端末とスマートフォン向けに専用アプリを開発。タブレット端末向けアプリでは帳票の管理・編集を可能にした。
一方のスマホ向けアプリでは、カメラで点検用の写真を撮影すれば、そのまま帳票に埋め込めるようにした。点検業務では、タブレットのカメラだと撮影が難しいケースもあるので、別のアプリにしたという。
もう一つは、アプリ上から帳票のマスターデータ(基本となるデータ)を直接操作できる情報管理の仕組みだ。米Googleのノーコード開発ツール「AppSheet」を活用。データを自社で保持しつつ、マスターデータの一覧表示や編集を、専用の管理画面から行えるようにした。
コトブキタウンスケープサービスはこれまで、点検対象の施設など、報告書の作成に必要な情報を、同社も所属する業界団体が提供するシステムで管理していた。
このシステムは「マクロのお化けみたいな感じで、さまざまなフォーマットに編集ができた」(小島代表)という。ただし、あくまで報告書を作る用途のシステムを転用している状態なので、情報の管理には難があった。
一方で、点検対象の施設などは、法律やガイドライン改正の影響で頻繁に変わる。つまりマスターデータを頻繁に更新・編集する必要があった。しかし、従来のシステムはあくまで報告書の作成用なので、データの更新・管理に向いていない。自社で管理しているわけではないので、一部のデータを事業に利活用できない問題もあった。そこで、より効率的に情報を編集・利活用できる仕組みが必要だったという。
一連の仕組みは段階的に運用を開始。5月には、既存の業務を全て新システムに置き換えた。これにより業務を効率化でき、2022年度の点検数を前年度の130〜140%まで伸ばせたという。「これまでなら手が回らなくなっていた業務量を回せるようになった」(小島代表)
ただ、新システムの開発に壁がなかったわけではない。例えば当初は、予算やスケジュール、開発要件の面で課題があったという。予算については中小企業ということもあり、アイレットを長期間拘束するだけの資金が用意できたわけではなかった。
スケジュールについては、一連のシステムが定常業務で必要なものだったこともあり「1年や2年かけて作るものでもない。早めに始めなくてはいけなかった」(小島代表)という。開発要件については、法改正やガイドラインの刷新により、要項が今後変わる可能性があった。
そこでコトブキタウンスケープサービスは、なるべく短期間でシステムを開発・リリースし、そこから実際に使いながら問題を解決していく方針を取った。開発期間が3カ月と短かったのはこのためだ。
AppSheetの採用も、短い開発期間内で機能を搭載できるようにと出したアイデアという。「マスターデータを編集するくらいならノーコードを一部使って開発するのが良いのかなと考えた」(石川さん)
自社の条件を鑑み、期限ありきでツールを開発することを選んだコトブキタウンスケープサービス。実際現場でツールを使う人からは「今までとそんなに変わらない」といった声が出ているという。小島代表は現場の声について「これまでとあまり変わらないと、というのは、今回のようなケースで一番大事」と話す。
「極端な話、PCすら触れない人のがやるような現場の仕事を置き換えると、大体は『よく分からなくなった』という声が出てしまう。その中で、完全に業務の移行を済ませられたのは大きい」(小島代表)
一方で、今回作り上げたシステムのさらなる拡充も検討している。点検の効率を向上すると同時に、後続の修理業務の改善にもつなげたいと小島代表。「後続業務に新システムの機能を接続し、点検したらすぐ修理につなげられるインフラにすることで、提案の精度を上げ、さらなる仕事の受注につなげていきたい」(小島代表)
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