もはやビジネスでの活用が当たり前になりつつあるIaaS・PaaSなどのクラウドインフラ。小規模でも利用を始めやすいメリットゆえに、スピード感が必要なビジネスなどで重宝されている。ただ、使いこなしているのはまだまだ大企業が多く、中小企業による利用は多くないのが現状だ。
一方で、クラウドを使いこなしてフットワーク軽くビジネスチャンスをつかんだ中小企業もある。公園設備の点検・修理を手掛けるコトブキタウンスケープサービス(東京都港区)もその1社だ。同社は米Googleのクラウドサービス「Google Cloud」やノーコード開発ツールを活用し、これまで課題のあった社内のシステムを3カ月で刷新。作業量の圧縮に成功し、2022年度の点検数を前年度の130〜140%まで伸ばせたという。
コトブキタウンスケープサービスによるクラウド・ノーコード活用はどのように実現したのか。同社の小島美和(よしかず)代表取締役と、導入を支援したSIer・アイレットの石川耕平(第四開発事業部)さんに聞いた。
大手企業を中心に活発化するIaaS(Infrastructure as a Service)やPaaS(Platform as a Service)の活用。一方、中堅中小ではまだクラウド自体への理解が進んでおらず、導入に踏み出せていない企業も多い。本特集では、中堅中小企業がIaaS・PaaSを活用する利点を整理し、ビジネスに役立てるヒントを発信する。
コトブキタウンスケープサービスは2009年創業。社員数は75人で、公園の遊具やベンチの点検、修理を手掛けている。公園の管理などに関する都市公園法は2017年に改正されており、年に1回の法定点検を必須としている。同社はこの点検を受け持っており、必要があれば修繕も行う。
ただ、小島代表によれば「残念ながら、日本全国の公園で100%徹底されているわけではないのが現状。しかるべき資格を持った人間が点検できていない公園が、ざっと見積もって全体の半分くらいある」という。
原因は点検事業者のリソース不足だ。「人が足りない、効率が上がらないという業務課題を常に抱えていた。数多ある点検事業者と同様、当社もなかなかお客さんのニーズに応えられなかった」(小島代表)という。
背景には、現場の業務を効率化しきれていない状況があった。例えば点検業務の場合、状況を残す写真を撮影し、報告書にまとめる必要がある。しかし、大量の写真を目視で整理し、帳票にまとめる手間が現場の負担になっていたという。
「デジカメで何百枚と撮影した写真を、1枚1枚見ながら整理してExcelの帳票に貼り付ける必要があった。そうしないと報告書が作成できなかったが、その作業は業務時間内に収まらず、滞在先のホテルで時間外にやらざるを得なかった」(小島代表)
業務削減が間に合わず、顧客のニーズに対応しきれていなかったコトブキタウンスケープサービス。しかし小島代表は一連の状況について「何かしら自分たちで新しい業務を進める仕組みを作れるんじゃないか」と考えていたという。小島代表はもともとIT業界出身で、システムの受託開発や、ITコンサルタントとしての経験もあった。
「自分の強みも生かしながら、この業界の仕事の仕方を変えようと思った」(小島代表)。そこで立ち上がったのが今回のプロジェクトだ。もともとはGoogle Cloudやノーコードにこだわっていたわけではなく、SaaSなどを活用して業務効率化できないか検討していたという。
ただ、目的に合ったSaaSは見つからなかった。一方で、プロジェクトにプロジェクトマネジャーとして参加した外部人材を介してアイレットとつながる機会もあった。そこでアイレットと協力し、クラウドを活用したプロジェクトとして進めることになったという。
活用するクラウドサービスにはGoogle Cloudを選んだ。AWSと比較検討していたものの、同社で採用していたグループウェア「G Suite」との相性などからGoogle Cloudにしたという。
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