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「エンジニア雇いたい」→「ゲーム実況しようぜ」 “どうしてそうなった”なSmartHRの採用活動、成果は?(1/2 ページ)

» 2022年12月23日 08時00分 公開
[吉川大貴ITmedia]

 YouTuberなど配信者・インフルエンサーの定番コンテンツとして人気を集めるゲーム実況配信。この人気を、ITエンジニアの採用に役立てようとしている組織がある。人事労務ツールを提供するSmartHRだ。

 同社はエンジニア・人事共同の取り組みとして、6月ごろから不定期にエンジニアの採用を目的としたゲーム実況動画を配信している。プレイするゲームは、相手を蹴落とすバトルロイヤル「Fall Guys」や、多忙な協力して料理を完成させるパーティーゲーム「Overcoocked! 2」などさまざまだ。

12月19日の配信

 SmartHRのゲーム実況は、エンジニアの採用に当たって効果を上げているのか。そもそもなぜ採用を目的にゲーム実況をしようと思ったのか。詳細を取り組みのキーパーソンに聞いた。SmartHRがゲーム実況を始めた背景には、ARR(年間定期収益)が45億円を突破(2021年時点)し、SaaS企業として名を上げつつある同社ならではの悩みがあるという。

「エンジニアがゲームしながら質問にこたえる枠」 すでに4回配信

 SmartHRのゲーム配信は、同社の雑司ヶ谷雄太さん(プロダクトエンジニア)が人事に持ち掛けて実現した企画という。タイトルは「エンジニアがゲームしながら質問にこたえる枠」。6月から12月にかけて、すでにYouTubeで4回に渡って配信している。

 内容はタイトル通りで、YouTubeのコメント欄に来た質問に、ゲームをしながら答えるというもの。ただし「いかなる状況においても組織の話を続けなければいけない」というルールがあるので、質問だけでなく雑談も仕事の話をする決まりだ。メンバーはプレイヤー4人と、司会・タイムキーパーなどを務める「天の声」役1人。いずれも社内のエンジニアだ。

 遊ぶゲームは画面の見やすさ、展開のメリハリ、プレイしながら質問に回答しやすいかを基準に選定。ゲーミングPCがないメンバーもいたので、PC・ゲームコンソールを跨いだ「クロスプレイ」が可能かどうかも基準になった。結果、初回に採用した横スクロール型対戦アクション「Ultimate Chicken Horse」、2回目のOvercoocked! 2を経て、3・4回目はFall Guysに落ち着いたという。

photo 初回配信前、プレイする候補として挙がったゲーム

 実際に質問も来ており「本日のお昼ごはんは?」といったカジュアルなものをはじめ「採用面接ではどんなところを見ているか」「残業の有無は」といったコメントもあったという。

photo 第3回配信時、実際に来た質問

 配信に当たっては、同時接続数や、映像のアーカイブの視聴数といったデータも集計している。1〜3回目については、回を重ねるごとに同時接続数やアーカイブの再生時間は減っていたものの、平均再生時間は増加した。

 12月19日に配信した4回目は公式ブログで告知をしたこともあってか、同時接続数も増えたという。正確な数値は公開していないものの、同社の南石愛実さん(採用広報)は「恐らく質問は4回目が一番たくさん来た。社員もたくさんしゃべった」としている。

「エンジニア組織に存在感」「面談で言及」 一定の効果も

 取り組みの結果、定量的な成果は出ていないものの、一定の効果も体感できているという。「カジュアル面談に来る候補者の中には、資料だけでは伝わらない生の雰囲気を求めて、配信を見てから来る人もいる。『すごくわちゃわちゃしていて、エンジニア組織も仲がよさそう』といってもらえることもあった」(雑司ヶ谷さん)

 社外だけでなく社内にも影響があった。事業部門を中心に社員数が増える中、エンジニア組織の存在感を示す効果が出たという。

 「エンジニアのプレゼンス向上に貢献している。人数比でみると、SmartHRは全体の1割ちょっとしかエンジニアがいない。ビジネスサイドのメンバーが増える中、エンジニアはそこまでのスピードで採用ができていないので、大人しくしていると認知されなくなってしまう。配信を始めてからは『何かエンジニア面白いことしてますね』といってもらえるようになった」(雑司ヶ谷さん)

「社内外でSmartHRのイメージに差」 ゲーム実況の理由は

 ゲーム配信により、社内での存在感を高めたり、組織のありのままの姿を伝えたりすることに成功したSmartHR。そもそも、雑司ヶ谷さんはなぜゲーム実況をしようと考えたのか。背景にはいくつかの理由があった。

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