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インボイス開始後、フリーランスはどう納税するのが正解か? 「2割特例」など3つの選択肢

» 2023年02月01日 19時40分 公開
[斎藤健二ITmedia]

 10月にスタートするインボイス制度はフリーランスにとって悩ましい制度だ。これまで免税事業者であれば消費税について気にする必要はなかったが、課税事業者となると消費税周りの事務手続きが必要になる。しかも令和5年度税制改正大綱では、フリーランスなど小規模事業者の負担を緩和する措置として、通称「2割特例」が設けられた。

令和5年度税制改正大綱では、フリーランスなど小規模事業者の負担を緩和する措置として、通称「2割特例」が設けられた

 選択肢としては、まず免税事業者のままでいる、課税事業者となり適格事業者となるという2つがある。免税事業者のままで通す場合、取引先の企業が消費税を負担することになるため、「仕事が減るリスクがある」とfreeeでプロダクトマネージャーを務める小泉美香氏は言う。

 公正取引委員会は、インボイス制度を契機として取引条件を見直す場合、優越的地位の濫用(らんよう)にあたらないよう注意が必要だとしている。これは「免税事業者に対する値下げ交渉はただちにNGではないが、インボイスを契機としての値下げや取引の停止は、優越的地位の濫用にあたる」(小泉氏)というものだ。それでも、代わりのいない独自のスキルを持っている人を除けば、仕事が減るリスクはついてまわる。

課税事業者選択したフリーランスの3つの選択肢

 ではインボイス制度を機に、課税事業者となり適格事業者番号を取得した場合はどうだろうか。実は、この場合にも3つの選択肢がある。

課税事業者となったフリーランスには、3つの選択肢がある

 1つ目は、預かった消費税から仕入れのために支払った消費税を引いて(控除)、残った額を納税する一般課税だ。ほとんどの企業が行っている、通常の消費税処理となる。

 2つ目は、支払った消費税を「みなし」で計算できる簡易課税だ。2年前の課税売上が5000万円以下といった条件があるが、支払った消費税を計算する必要がなく、業種ごとに決められた「みなし仕入れ率」から税額を計算できる。

 例えばフリーランスに多いサービス業の場合、売上として預かった消費税の半額の消費税支払いがあったとみなして計算できる。一般課税に比べ、仕入れなど経費が少なければ納税額が少なくなるだけでなく、事務処理も簡単だ。

 そして3つ目が、今回設けられた「2割特例」だ。これは「免税事業者から適格事業者になった人限定だが、預かり消費税の2割が納税額となるもの」(小泉氏)だ。つまり8割を控除できることになる。ただし2026年9月30日までの3年間限定だ。

納税額計算の違い。簡易課税のみなし率は業種によって異なる

 ややこしいことに、この3つは「これが最もお得」という正解がない。支払った経費の額が多く、控除できる消費税額が大きければ一般課税が最もお得だ。例えば、売上よりも支払った経費のほうが多ければ、差額の消費税が戻ってくる(還付)こともある。

 こうしたフリーランスをサポートするため、freeeが2月7日に提供するのが「消費税 納税額シミュレーター」だ。簡易課税や2割特例にも対応しており、4つの簡単な質問に答えるだけで、納税額のシミュレーションができるという。

簡単な質問に答えるだけで納税額をシミュレーションでき、最適な制度を選択できる「消費税 納税額シミュレーター」

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