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自撮りでアート検索 自分に似た作品はヒットする? Google製アプリを遊んでみた ペット版も遊んで学べる「Experiments with Google」(第30回)(1/2 ページ)

» 2023年02月04日 09時00分 公開
[佐藤信彦ITmedia]

 正月気分がやっと抜けたら、1月があっという間に終わってしまった。正月のことを思い出そうとしても、食べて飲んで寝てというだけで、何も印象に残っていない。

 筆者が子どもだったころ、昭和の正月はどのように過ごしていたか。友達や親戚で集まって、たこ揚げやすごろく、福笑いといった遊びをしていた記憶がある。いまになって思えばまるで童謡の世界だ。これに対し、現代の子供たちはゲームやネット動画が中心なのだろう。この数十年で世の中は様変わりした。

 とはいえ昭和が紙やリアルの時代、令和がデジタルやバーチャルの時代というメディアの変化はあるものの、遊びの本質は変わっていないのだろう。最新技術を利用している現代のゲームも、昔ながらの遊びの要素を含んでいる。

 本連載で紹介してきた、Googleが公開している最新技術のショーケース「Experiments with Google」のコンテンツにも、AIや拡張現実(AR)といった技術の紹介に、伝統的な遊びのエッセンスを活用しているものがある。連載の第1回で紹介したAI影絵遊びは、そうした例の一つだ。ちょうど中国の旧正月(春節)の時期に記事を公開していた。

 正月を感じさせるコンテンツは、Experiments with Googleにあるだろうか。

Googleの豊富なラインアップ 正月らしいコンテンツはある?

 スマートフォンを利用するARたこ揚げやARこま回し、自撮りした顔の画像を操作するデジタル福笑いなどを期待して、Experiments with Google内を見てみた。ところが、正月らしいコンテンツは見当たらない。

 そこで、正月のような機会に集まって楽しめるものと妥協した。連載30回目の今回はGoogleのアート紹介プロジェクト「Google Arts & Culture」から、「Art Selfie」と「Pet Portraits」を取り上げる。

 Art SelfieとPet Portraitsはどちらも、スマホで撮影した写真をAIで解析し、それと似た芸術作品を見つけ出してくれる。元になる写真として自撮り画像を使うのがArt Selfie、動物の画像を使うのがPet Portraitsだ。

photo カメラとAIで遊ぶArt SelfieとPet Portraits

世界中のアートを紹介 Googleの取り組み

 そもそもGoogle Arts & Cultureは、絵画や彫刻、音楽など、世界中のさまざまな芸術作品を新たな視点から紹介するGoogleの取り組み。AIの力を借りて日本の絵巻物を鑑賞していく「Beyond Scrolls & Screens」のようにExperiments with Googleと連携したコンテンツも多く、本連載でも度々触れてきた。

 専用のスマートフォンアプリ(iOS版Android版)もあって、手元で手軽に楽しめる。オペラAI「Blob Opera」や、BTSとGoogleストリートビューのコラボ作品落書き判定AI「Guess the Line」など本連載で扱ったコンテンツも、実はこのアプリからアクセスできる。

photo 芸術鑑賞だけでなく、遊べるコンテンツもたくさんある(出所:Google)

 Art SelfieとPet Portraitsも、こうしたコンテンツの一つだ。Google Arts & Cultureアプリをインストールすればすぐに使えるので、早速試してみよう。

自分に似た芸術作品を探せる「Art Selfie」

 最初に試すのは、自撮り画像と似た作品をAIで検索できるArt Selfieだ。Google Arts & Cultureアプリのホーム画面右下にある、ゲームコントローラーの形をした「PLAY」ボタンをタップして、一番下までスクロールすると起動メニューが現れる。

 使い方は、説明がいらないほど簡単だ。スマホの内側カメラで自分の顔を捉えて撮影ボタンをタップすると、一瞬で似ている作品が表示される。気に入った作品があれば出力結果の保存やSNSへの共有が可能だ。この画面から作品の解説ページに飛べるので、その作品を詳しく鑑賞してもいいし、同じ作者の別の作品をたどっていっても楽しい。

photo 正面を向いた顔は検出しやすい

金髪かつらやサングラスでAIを悩ませる

 正面を向いた自撮りだけでは面白くないので、横顔とサングラス、かつらを試してみた。横顔は、AIも難なく横顔の作品を出してきた。写真と反対向きをした構図の作品まで見つけた動作は興味深い。長めの金髪かつらをかぶると、結果が素顔のときからガラッと変わった。

 サングラスをかけた作品は見つけられなかった。Google Arts & Cultureのコレクションにそうした作品がないからか、AIが学習していないからか、理由はいろいろ考えられる。

photo 横顔は問題ないが、サングラスは苦手なAI

 次に、帽子をかぶってみた。両側に丸い耳のついた特徴的なデザインの帽子だったのだが、AIはそんなこと気にせず、頭に何かかぶっている作品をピックアップした。

photo 帽子をかぶると、取りあえず何かかぶった作品を出す

肖像画で試したらどうなる?

 自撮りでなく、肖像画を検索したらどうなるだろう。まず、恐らく世界で一番有名な肖像画であろうレオナルド・ダ・ヴィンチの「モナ・リザ」で試してみた。ちなみに使った画像もGoogle Arts & Cultureに掲載されていたものだ。出力結果を見ると、オリジナルの作品だけでなく模写や似ている作品が結果に並び、いろいろ見ていきたくなった。

 今度は、本家モナ・リザをモチーフにした作品を使ってみる。連載のうち絵画クロスワードの回で紹介したフェルナンド・ボテロの「モナ・リザ」からは、残念ながらオリジナルの「モナ・リザ」にたどり着けなかった。

photo オリジナルのモナ・リザは正解(左)。モチーフにした作品は別物と判断(右)

 フェルメールの「真珠の耳飾りの少女」を試すと、見事にオリジナル作品を見つけ出した。

photo オリジナルだけでなく、似ている作品も探せる

 同じフェルメールの作品でも「牛乳を注ぐ女」はオリジナル作品を見つけられなかった。ゴッホの「灰色のフェルト帽の自画像」も同様だ。

 ただし、顔の表情やタッチが似ている別の作品に出会えることは収穫といえる。Art Selfieは、似ている作品を探すツールとしても使えた。

photo AIが学習していないのか、オリジナルを見つけられない

 デフォルメが極端なムンクの「叫び」や、人間の顔ですらないぬいぐるみは、検索結果を表示できなかった。Art Selfieは顔画像を解析するよう作られたAIなので、顔と見なしにくい画像の処理には対応していなさそうだ。

photo 検索を諦めるAI
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