そもそも、技術統括局は西大和学園のコンピュータ部や放送部から生まれた組織だという。誕生のきっかけは毎年5月開催の体育祭。同学の体育祭では、運営に携わるコンピュータ部や放送部、写真部のメンバーが、参加する選手(生徒)の情報を手書きで名簿に起こしていた。
そんなあるとき、1人の生徒がゴールデンウイークを全て費やし、手書きの名簿を全てデジタル化。これを機に、体育祭の運営に携わる生徒の一部が自分たちを「電算部」と名乗り始めた。
しかしその後、新型コロナウイルス感染症が拡大し、2020年の体育祭は中止に。清榮祭も中止になる可能性が浮上した。一方で電算部など生徒の一部からは「清榮祭は自分たちの集大成でもあるので、何かやりたい」という声が出ていた。教師と生徒が交渉する中で、オンラインで有志団体のパフォーマンスなどを配信するアイデアが出た。
ただ、実現には学園長の許可が不可欠。学園長との交渉に当たっては、部活や生徒会など、組織としての体裁も必要になった。ただ、電算部はあくまで生徒の自主的な集まりで、正式な組織ではなかった。
そこで生まれたのが「生徒会電算部」という組織名だ。西大和学園において、清榮祭の実行委員は生徒会の下部組織だった。電算部の中には清榮祭の運営に携わっている生徒も多かったことから、生徒会内の組織として立場を得たという。
当時中学3年生だった栗栖さんも、放送部だったことから電算部に協力。YouTubeやWordPressなどを活用した配信の仕組み作りを手掛けた。とはいえ「もともとは清榮祭の配信に限った組織のつもりだった」と光永教諭。しかし、この後思いもよらない事態が起こった。
電算部に起こった思いもよらない事態、それは配信ノウハウの需要増加だ。西大和学園において、清榮祭が終わった後の秋から冬にかけては、学外に向けた講演会、学校説明会など、発表会が相次ぐシーズンという。
とはいえコロナ禍の最中では、発表会もオンライン配信がほとんど。配信のノウハウが求められ、清榮祭で知見を得た生徒会電算部や、栗栖さんたちが呼び出される機会が増えたという。
「配信系に彼らがどんどん呼ばれ始めた。部活などであれば予算のついた活動ができるが、彼らは有志。システムや予算の部分が中ぶらりんな状態だった。学校として枠組みを用意する必要性があった」(光永教諭)
そこで栗栖さんを中心に、生徒会電算部を技術統括局として再編成。「活動が生徒会の枠を超えていることもあり、正式な組織として生徒手帳に記載するに当たって、部活でも委員会でもない技術統括局として活動を行うことになった」(光永教諭)という。
清榮祭などについても「生徒と教員が一緒に学校の活動を作っていく、もしくは生徒が自分たちのイベントを自分たちで配信していくような仕組みが出来上がった」(光永教諭)
吉田さんや渡部さんもその途上で合流したという。吉田さんは、コロナ禍で訪問しにくくなった学校を3Dモデルで再現するとして、当時の先輩が立ち上げたプロジェクトを引き継ぐ形で参加。渡部さんは「独学で勉強していたプログラミングを実践する機会が欲しい」として参加した。他のメンバーも集まり、約30人規模の組織になったという。
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