配信をきっかけに活動を始めた技術統括局。ただ、肝心の配信にその後陰りが見えた。YouTubeなど既存のプラットフォームだと満足な機能が得られなかったのだ。
例えばYouTubeだと、顔出しをしたくない生徒の存在なども考慮し、限定公開機能を使っていた。しかし、限定公開ではURLを知っている全員が閲覧できてしまうので、秘匿性が高くなかったという。
他にもいくつかの問題があり、乗り越えるには他のプラットフォームを探すか、映像配信システムを自作するしかなかった。しかし、他のプラットフォームにも希望を満たすものはなかった。そこで栗栖さんが出会ったのがAWSだったという。
「最初は半分冗談で自作するといっていたが、IVSやクラウドならいろいろなことができると知った。そのタイミングでコーディングができる渡部君が参加したので、試してみることにした」(栗栖さん)
こうしてIVSを使った開発を開始。NYGstreamingを作り上げ、まずは2022年の体育祭で活用したという。体育祭では他にも、電算部誕生のきっかけになった名簿作りをAIで自動化する仕組みも開発した。
ただ、体育祭で使ったバージョンはアーカイブ機能などがなく、改良の余地があったと栗栖さん。そこで清榮祭に向けては、NYGstreamingを改良。他のシステムの開発と並行して、夏休みを含む3カ月ほどでアップデートしたという。他のシステムでもAWSを利用したのは、NYGstreamingとの連携性や、配信・メディア関係の機能などを重視したためという。
とはいえ、生徒がシステムを開発することと、それを学校が実際に使うことは別だ。人によってはリスクと感じる人もいるだろう。それでも西大和学園が技術統括局の試みを認めた背景には、同校の教育方針が影響しているという。
「西大和学園の校訓は探究・誠実・気迫。探究することや、エネルギーを持ってそれに挑戦することは、頭ごなしにはNOといえない。学年を受け持つ先生も『好きなようにやらせて』というスタンスだった」(光永教諭)
学校の方針に加え、技術統括局からの働きかけもあった。栗栖さんたちはシステムの実運用に当たって、学園長に企画書を提出。予算についても、過去の実績から見込まれる費用を試算した。YouTubeで配信していたときの再生数・視聴者数などをスプレッドシートに整理。清榮祭の開催に当たって振り分けられる予算の範囲内で収まる見立てを示したという。
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