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Appleが「オフィスで働いて」と社員に望む理由 日常が戻ってきた米国の「ハイブリッドワーク」事情シリコンバレーから見た風景(1/3 ページ)

» 2023年02月27日 16時00分 公開
[五島正浩ITmedia]

 シリコンバレーのIT企業にソフトウェアエンジニアとして勤務する五島正浩さんが見た現地のテック動向を紹介する連載「シリコンバレーから見た風景」。第25回は、コロナ禍から3年がたち、日常が戻ってきた米国の「ハイブリッドワーク」事情について紹介します。


 振り返ってみるとコロナ禍が始まってから3年がたちます。先が見えない在宅勤務生活が続いていましたが、昨年からは経済再開に伴いオフィス勤務に戻る動きが始まりました。シリコンバレーではこれをRTO(Return To Office)と呼んでいます。

 オフィスに出社してオンサイトで働くのか、これまで通りリモートワークを続けるのか、二つのバランスを取ったハイブリッドを導入するのか。ワークスタイルの在り方が大きく議論されました。今シリコンバレーのエンジニアはどのように働いているのでしょうか? 今回はシリコンバレーのハイブリッドワーク事情を取り上げます。

ハイブリッドと書かれた看板。サンタクララにて

シリコンバレーの在宅勤務

 在宅勤務は英語で「Work From Home」または単にWFHと言いますが、シリコンバレーではコロナ禍が始まる前から、オフィス勤務の人がやむを得ない理由で家から仕事をする場合によく使われてきました。例えば「家族が熱を出しているから今日はWFH」とか「家の工事業者が来るから明日はWFH」といった感じです。マネジャーの判断次第ですが、妥当な理由でかつ仕事に影響がなければダメといわれることはないでしょう。

 また自宅を勤務地とした在宅勤務をリモートと呼ぶことがあります。一時的なものではなく採用時に正式に決められたもので、オフィスに自分の席はなく出社は出張扱いです。アメリカは国土が広いこともあり、他州などオフィスから遠く離れたところに住む優秀な人材を採用する際に以前からよく使われています。

 このようにシリコンバレーではコロナ禍前から在宅勤務は限定的に許容されていましたが、基本はオフィスでのオンサイト勤務なので、在宅勤務を認めるかどうかは常に議論になっていました。2013年には、元Googleで当時Yahoo!のCEOだったマリッサ・メイヤーが「人は1人でいる方が生産性は上がるが、集団になった方がイノベーティブになる」として在宅勤務を禁止したことがニュースになっています。

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