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墓もクラウドの時代に? 故人やペットをスマホで偲べる「クラウ墓」登場

» 2023年03月24日 15時57分 公開
[井上輝一ITmedia]

 先祖の墓が遠方にあって墓参りが大変、ペットがなくなったが供養の方法が分からない──こんな悩みをテクノロジーで解決できないか。かつて日本IBMでThinkPadに携わり、ASCII.jpで連載を続けている“T教授”こと竹村譲さんなどが3月24日に、故人やペットを偲ぶ(しのぶ)ためのクラウドサービス「クラウ墓」(クラウボ)を発表した。同日から出荷を始める。

「クラウ墓」(クラウボ)の手のひらサイズの“墓”「Handy Tomb Unit」 左から「御影60」「欅55」「欅45」

 クラウ墓は故人・ペットを偲ぶためのWebページにアクセスするためのQRコードと、遺骨カプセルを収納できる手のひらサイズの“墓”である「Handy Tomb Unit」から成る。

QRコードシートを紹介する、“T教授”こと竹村譲さん

 QRコードをスマホで読み込むと故人のWebページが表示され、その生涯や思い出の写真、好きな食べ物、嫌いなものといった故人にまつわる出来事を振り返ることができる。FacebookやTwitter、Amazon Photosなど関連するページもリンク可能。QRコードはHandy Tomb Unitに貼る想定だが、物理的な墓部分が不要な人向けにQRコード部分のみの販売もするという。

 Handy Tomb Unitの素材で3種類を用意。御影石を使った「御影60」が1万2800円、新潟産のケヤキを使った「欅55」が8800円、中国産のケヤキを使った「欅45」が6800円。数字部分は立方体であるHandy Tomb Unitの1辺のサイズ。それぞれサービスの5年使用権が付属する。QRコードシートのみの場合は5年使用権が4800円、10年使用権が6800円。

クラウ墓のページ例。ペットの場合

「自分たちが欲しいものを作る」

 「基本的に自分たちが欲しいものを作っている」と話す竹村さん。ここで言う自分たちとは、竹村さんを中心とする非専従のモノづくり集団「Thinking Power Project」(以下TPP)だ。TPPはこれまで大学ノート「ツバメノート」のオリジナルモデルや、超軽量カバン「ThinkAero」などを企画から製造、販売まで行ってきた。

 製造・販売に関しては、TPPメンバーの長澤久吉さんが代表取締役を務めるReUdo(リュウド、新潟県十日町市)が手掛けてきた。クラウ墓の製造・販売・サービス提供もReUdoからとなる。

 クラウ墓の企画動機は、2025年に団塊世代全員が75歳を超える超高齢化かつ少子化社会になることと、進む核家族化などから、従来の墓や先祖の供養に対しさまざまな問題が出てきていること。その一方で、宗教的背景は関係なしに故人やなくなったペットをいつでも偲べるようにしたい、という思いがあったという。

 近年では「自宅墓」(じたくぼ)あるいは「宅墓」(たくぼ)という、仏壇のように自宅に置くタイプの墓も出てきている。仏壇や自宅墓は墓参りにお寺などへ赴かずとも先祖供養ができるのがメリットだが、家族以外で故人になじみ深かった人が手を合わせるにはその家まで行く必要がある。

 クラウ墓であれば、故人を偲びたい人はいつでもページにアクセスできる。もちろんQRコードを持っていなくても、ブックマークなどでページへのリンクさえ分かっていれば問題ない。当然PCからのアクセスも問題ない。

既存の墓の代替ではなく補完

 クラウ墓は既存の墓の代替ではなく補完だという。例えば自宅墓にQRコードを貼ってもいい。従来のお墓の御影石にQRコードを彫り込んでもいいかもしれない。「OEMとして提供は可能。自分たちは営業機能を持っていないので、セレモニー関連ビジネスをしている人で興味があったら連絡してほしい」と竹村さん。

セレモニー関連ビジネス各社との協業の可能性も模索する

いつまで続くサービスなの?

 ひとつ懸念なのは、墓は比較的永続的な概念であるのに対し、クラウドサービスとなるといつまで提供できるのかということだ。そんな疑問に「30年を超えての提供は現実的ではない。自分も死んでいるだろうし、会社がどうなっているかも分からない」とReUdo長澤さんが答える。あくまで今現在手軽に故人を偲ぶ手段として想定しているという。

 ちなみに、故人が人望の厚い人だと多くの人がその故人のページを見に来ることも予想されるが「100人以上にはページを配布しないで」とのこと。サービスがAWS上にあるため、スケーリングや料金の問題が発生するからだ。

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